中山クリニック

右肩(左肩)がズキズキ痛む!その原因と対処方法は?

掲載日:2024.05.08

はじめに

肩の痛みは30歳以降になると多くの人が経験する症状で、夜間痛があると眠れない、服を着るたびに痛い、ズボンを上げると痛い、エプロンの紐が結べない、など日常の生活がつらくなります。このコラムでは、肩の痛みについて、原因と考えられる病気、予防方法、治療法について、分かりやすく解説します。

————目次————
 

1.右肩のズキズキする痛みの症状とは?
 ①右(左)肩痛に特有の症状と診断のポイント
 ②痛みが出やすい部位と原因
 ③病気が引き起こす症状
2.右(左)肩の痛みに関連する病気
 ①肩関節周囲炎、五十肩(凍結肩、拘縮肩)、四十肩
 ②石灰沈着性腱板炎肩
 ③頚椎椎間板ヘルニア、変形性頚椎症
 ④胸郭出口症候群
 ⑤腱板断裂
 ⑥変形性肩関節症
 ⑦内臓疾患からくる肩の痛み
3.右(左)肩の痛みの予防と日常生活での注意点
 ①予防に役立つ運動とストレッチ
 ②肩への負担を軽減する日常生活のコツ
 ③デスクワークと長時間の姿勢が肩痛に与える影響
4.専門医による診察と治療方法
 ①整形外科やクリニックでの受診と診療の流れ
 ②診察で行われる検査方法とその目的
 ③投薬、注射、手術を含む薬物療法の選択
5.肩の痛み対処法の基本
 ①自宅でできる痛みの緩和方法
 ②肩の炎症を抑えるための痛み止めや湿布の効果的な使用
 ③日常生活の注意(運動と安静のバランス)
6.リハビリテーションによる肩の痛み改善法
 ①物理療法
 ②運動器リハビリテーション
 ③体外衝撃波治療
  ④アスレチックリハビリテーション
7.痛みに対する治療計画
 ①保存治療と日常生活の指導
 ②症状が改善しない時の対処法
 ③慢性の肩の痛みと向き合うための心構え
8.肩の痛みに対する未来の治療
 ①AIによる画像診断
 ②再生医療による治療
 ③オーダーメイド治療の期待
9.まとめ

1.右肩のズキズキする痛みの症状とは?

 

1. 右(左)肩痛に特有の症状と診断のポイント

肩が痛くなる症状は、鋭い痛み、ズキズキとした痛み、引っかかる痛み、重だるさなど様々です。痛みの原因が肩関節である場合は、肩を動かすときに痛みが強くなる、腕を上げようとすると痛い、横向きに寝る時に痛みのある肩を下にできない、寝返りすると痛くて目がさめるなどの特徴があります。診断では、どのような痛みか、動かす時に痛いか、じっとしている時(安静時や就寝時)も痛いか、腕や手がしびれているか、などを確認します。

2. 痛みが出やすい部位と原因

肩の痛みは、肩関節、肩甲骨周辺、鎖骨周囲、上腕部に発生することが多いです。原因としては、筋肉の疲労、関節の炎症、関節の拘縮、スジ(腱)の損傷などがあります。腕や指がしびれる場合は頸椎や胸郭で神経が圧迫されている可能性があります。

3. 病気が引き起こす症状

肩の痛みは、肩関節が原因ではなく、首(頸椎)の椎間板ヘルニアや胸郭出口症候群、心筋梗塞、ガン(悪性腫瘍)など、他の部位の病気によって間接的に引き起こされることもあります。首や胸郭が原因の場合は、神経や血管が圧迫されるので肩の周囲がしびれたり冷たい感じを自覚します。心筋梗塞や狭心症など心臓が原因の場合は、突然、左肩から胸にかけて激痛が起こります。ガンによる痛みは、安静時や夜間にも痛みが続き、痛み止めがほとんど効果ありません。

2. 右(左)肩の痛みに関連する病気

 

1. 肩関節周囲炎、五十肩(凍結肩、拘縮肩)、四十肩


これらの疾患は、肩の関節が硬くなり、痛みを伴い、肩の可動域が制限されることが特徴です。40歳以上になると多く見られるようになります。原因ははっきりしないことが特徴です。

2. 石灰沈着性腱板炎肩

肩のスジ(腱板や上腕二頭筋腱)に石(カルシウム)がたまる病気です。激痛で肩が動かせなくなり、夜も眠れないほどの痛みになります。缶コーヒーやインスタント食品などリンの過剰摂取が原因とも言われています。

3. 頚椎椎間板ヘルニア、変形性頚椎症

首で神経が圧迫されることで肩にしびれが広がるような痛みを引き起こします。特に首を動かすと肩まで痛む場合や腕を下ろすと痛みが強くなる場合は、頚椎の問題が疑われます。

4. 胸郭出口症候群

第一肋骨と鎖骨の間で神経や血管が圧迫されて肩の痛みを生じます。吊り革を持つ、洗濯物を干す、など腕を上げるときに痛みが強くなります。なで肩や猫背の女性に多いですが、過度の筋トレや野球の投球障害など男性でも起こります。

5. 腱板断裂

50歳以降によく見られ、50肩と間違って診断される事が多い疾患です。重量物を持つ仕事や筋トレを行う、不自然な肩の姿勢で作業する、急に重たい物を持った、全力投球した、転倒して手を突いた、などが原因で肩のスジ(腱)が痛む疾患です。女性では、はっきりした原因のない変性断裂もよく見られます。MRIで診断される事が一般的でしたが、最近はエコーでも診断が可能です。

6. 変形性肩関節症

肩関節の上腕骨と肩甲骨臼蓋の間にある関節軟骨がすり減った病態です。ひざ(膝)や股関節と違って、かた(肩)関節は、荷重関節(体重のかかる関節)ではなく、非荷重関節(体重がかからない関節)なので、膝関節や股関節よりも頻度は少ないです。ステロイドやアルコールを大量に服用することによって生じる上腕骨骨壊死や腱板断裂を放置している事によって起こる腱板断裂性関節症も含まれます。

7. 内臓疾患からくる肩の痛み

心筋梗塞や狭心症、胆石症、肺ガン、ガンの骨転移など、一部の内臓疾患が肩に痛みを引き起こすことがあります。安静にしても痛みが治らない、痛み止めの効果がない、突然痛みが出現する、などの特徴があります。

3.右(左)肩の痛みの予防と日常生活での注意点

1.予防に役立つ運動とストレッチ

肩は人間の関節の中で最も可動域が大きい関節です。しっかりと肩を動かすことで筋肉を強くし、柔軟性を保つことが予防にはとても重要です。肩を色々な方向に動かすストレッチが効果的です。

2.肩への負担を軽減する日常生活のコツ

重いものを持つときは肩に負担がかからないように注意し、普段の生活では猫背や肩をすぼめないように正しい姿勢を心がけてください。長時間同じ姿勢で仕事をすると、肩や首に負担がかかるので、適時ストレッチを取り入れることが肩の痛みを予防することにつながります。

3.デスクワークと長時間の姿勢が肩痛に与える影響

長時間パソコンを使用する場合は姿勢が悪くなりやすいので、意識的に休憩を取り、肩や首の位置を正すことが重要です。

4.専門医による診察と治療方法

 

1.整形外科やクリニックでの受診と診療の流れ

肩の痛みが続く場合は、まず整形外科を受診します。問診、触診、必要に応じて画像診断が行われます。

2.診察で行われる検査方法とその目的

X線、運動器エコー、MRI、CTなどの画像診断により、肩の状態を詳しく調べ、正確な診断を目指します。X線検査では、肩のアライメントや骨の異常、石灰沈着の有無を確認し、エコーでは腱板が切れていないか、水が溜まっているか、石灰沈着の場所などがすぐに確認できます。MRIでは腱の詳しい評価や筋肉の変性、関節内の詳しい評価ができます。CTでは骨や石灰沈着の詳しい評価ができます。

3.投薬、注射、手術を含む薬物療法の選択

痛みの程度や原因によって、抗炎症薬の投与、ヒアルロン酸やステロイド注射を行います。まずはしっかりとした保存治療を行います。エコーを治療に用いることによって、正確に痛みの原因となる部位へ治療することが可能です。

5.肩の痛み対処法の基本

 

1.自宅でできる痛みの緩和方法

湿布を貼ること、軽いストレッチやマッサージで痛みを和らげる方法があります。ねんざや転倒して痛みが出た場合や仕事、スポーツで肩を使いすぎた場合は冷やすこと(氷袋やアイスノン)が効果的です。逆に肩の痛みが1ヶ月以上続く慢性の痛みなら、入浴やシャワーで温めると楽になることが多いです。

2.肩の炎症を抑えるための痛み止めや湿布の効果的な使用

医師の指導のもとで、適切な痛み止め(鎮痛剤)や湿布、塗り薬(消炎外用剤)を使用することが炎症を抑え、痛みを軽減します。外用剤は入浴後の血管が拡張した時に使用する事が効果的です。

3.日常生活の注意(運動と安静のバランス)

運動しすぎると関節の炎症が強くなりますが、逆に全く肩を動かさない過度の安静は肩の動きが悪くなり筋力低下を招くため、適度な運動を心がけることが重要です。運動と安静は、アクセルとブレーキの関係ですね。肩を動かさないと凍結肩になり、とても治療に時間がかかります。

6.リハビリテーションによる肩の痛み改善法

 

1.物理療法

物理療法では肩の血流を良くするために温めます。ホットパックは肩表面の血流を改善し、超音波や低周波レーザーは肩深部の血流を改善します。

2.運動器リハビリテーション

国家資格を持った理学療法士が指導しながら行います。肩の可動域を痛みが出ないように改善させ、硬くなった筋膜や神経を緩めるように運動器リハビリテーションを行います。当院では理学療法士も運動器エコーの研修を受けています。

3.体外衝撃波治療

石灰沈着性腱板炎には、収束型の体外衝撃波治療が有効です。エコー下に石灰沈着の部位を確認し、照射します。注射や手術とは違う保存治療なので、出血せず治療後の入浴や運動の制限もありません。保険診療適応外なので自費診療となります。
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4.アスレチックリハビリテーション

肩の痛みからスポーツ競技に復帰する場合、過度な負荷を避け、徐々に強度を上げていくことが肩への負担を減らします。一般的にスポーツをする前には、動的ストレッチによる適切なウォームアップ、運動後には静的ストレッチとクールダウンを行います。

7.痛みに対する治療計画

 

1.保存治療と日常生活の指導

まずは徹底的に保存治療を行います。診断により肩の痛みの原因を特定して、日常の生活指導も行います。運動器リハビリテーションにより肩の正しい動かし方とストレッチ、必要に応じてエコー下のブロック(ハイドロリリースや関節内、滑液包ブロック)を行います。
痛みが改善した場合は、肩の痛みが再発しない指導を行います。

2.症状が改善しない時の対処法

改善が見られない場合は、痛みの原因を再度確認して治療のアプローチを見直します。痛みが継続する場合や増強する場合は、外来で上肢だけの麻酔で肩の可動域を改善させる非観血的授動術や手術治療として関節鏡による治療も選択肢となります。いずれにしても常に身体の負担が少ない(侵襲が少ない)治療が優先されます。

3.慢性の肩の痛みと向き合うための心構え

慢性的な痛みに対しては、心理的なサポートも重要です。痛みが長く続いていると、痛みの原因がなくなっても神経が痛いと思い込む事があります。難しい言葉ですが、神経障害性疼痛や心因性疼痛と言われます。これらは内服治療が有効な事もありますが、自分から痛みと向き合うことを学ぶことが症状を良くする助けになります。

8.肩の痛みに対する未来の治療

 

1.AIによる画像診断

生成型AIの出現で医療技術の革新が起こり得ます。最新の画像診断技術によって、肩の痛みの原因をより明確にすることが期待されます。

2.再生医療による治療


PRPやAPSなど自分の血液を用いた再生医療で関節の炎症を改善して痛みを抑えることが可能となっています。今後は脂肪幹細胞移植など新しい再生医療が治療オプションとして期待されています。これらの再生医療は保険適応外ですが、関節鏡下に腱板修復術を行うときにコラーゲンシートで腱板を補強する治療は保険適応となっています。
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3.オーダーメイド治療の期待

将来的には、個々の患者さんの病態に合うカスタマイズされた治療法が開発される可能性があります。遺伝子解析などの進歩によって、より高い治療成果が期待できるようになります。

9. まとめ


肩の痛みは多くの原因によって引き起こされるため、正しい診断と適切な治療法の選択がとても重要です。普段の生活の中で予防することも、痛みの管理には不可欠です。もしあなたが肩の痛みに悩まされているなら、早めに整形外科専門医の診断を受けることをお勧めします。
 
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