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腕が上がらない!五十肩、四十肩の症状と治し方

掲載日:2024.03.22

はじめに


四十肩や五十肩(医学用語では肩関節周囲炎や凍結肩と呼ばれます)は、40歳から60歳の間に多く見られる症状で、肩の痛みや動きの制限を伴います。このコラムでは、症状の原因、診断方法、そして効果的な治療法について、わかりやすく解説していきます。

————目次————
 

1.症状
2.原因
3.診断
4.治療法
非手術的治療
  ①理学療法
  ②薬物療法
  ③温熱療法
  ④ブロック療法
  ⑤ハイドロリリース
  ⑥マニュピレーション(非観血的授動術)
手術的治療
5.予防と管理

1.症状

四十肩や五十肩の主な症状は、肩の痛みと肩の動きの制限です。特に、腕を横や上に上げる動作が難しくなり、ズボンを上げる時に痛みがあり、シャツや下着を着ようとしても手が動かず、動かすたびに痛みを感じます。また夜間に痛みが悪化することも多く、痛い肩を下に寝ることができないので寝返りが困難になり睡眠を妨げる原因となることがあります。

2. 原因


四十肩、五十肩の発症原因は完全には解明されていませんが、加齢による腱や関節包の変性、肩の使いすぎ、不自然な肩の動きで腱(筋やスジ)や関節包に小さなキズが出来る、または肩周辺の血流不良が関係していると考えられています。糖尿病の患者さんは四十肩、五十肩になりやすいと報告されています。

3. 診断

正確な診断のためには、まず詳細な問診と丁寧な診察が行われます。四十肩、五十肩は正式な病名ではなく、病態です。わかりやすく例えると、腰痛には骨折や腰椎椎間板ヘルニア、腰椎分離症など背骨が原因の場合と尿管結石や急性膵炎、大動脈解離など内臓や血管が原因の場合があり、腰痛は正式な病名でなく、症状を表す病態ですよね。
つまり四十肩、五十肩には、肩のスジや筋肉、腱の断裂など色々な病気が含まれているので、肩関節学会では、医療従事者が四十肩や五十肩という言葉を使うことを禁止しています。いわゆる従来の四十肩、五十肩は、レントゲンやエコー、MRIで明らかな異常がなく、肩の動き(可動域)が制限された状態をいいます。医学用語では凍結肩や拘縮肩、癒着性肩関節包炎が正式な病名になります。
肩関節の症例について

4. 治療法

治療方法は、主に非手術的治療と手術的治療の2つに分類されます。

非手術的治療

1. 理学療法

理学療法士の指導下で胸郭と肩関節を動かして行きます。痛みのない範囲から少しずつ上腕骨頭が求心位を得られる運動を通じて、肩の柔軟性と強度を徐々に回復させます。

2. 薬物療法

炎症を抑え、痛みを緩和するために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が処方されることがあります。

3. 温熱療法

血流を促進し、筋肉の緊張を和らげるために使用されます。

4. ブロック療法

関節内や滑液包に痛み止めやヒアルロン酸、ステロイド剤を注射します。

5. ハイドロリリース

エコー下で神経を見ながら行います。肩甲上神経、腋窩神経、胸背神経、腕神経叢などに生理的食塩水や少量麻酔薬で神経の癒着を剥がし、神経の滑動性を改善する治療です。米国ではブドウ糖を用いてハイドロリセクションと称されます。

6. マニュピレーション(非観血的授動術)

エコー下に頸椎神経根ブロックを行い、痛みを取ってから肩関節の受動術を行います。 入院の必要なく短時間で可能です。

当院では運動器理学療法士が医師と密に連携しながらリハビリを行っています。痛みを生じる場所を同定して、エコー下にブロックやハイドロリリース、マニュピレーションを行っています。全て外来診察で即時に対応可能です。

手術的治療


症状が重度で、非手術的治療による改善が見られない場合、関節内視鏡手術が検討されます。関節内視鏡は小さな切開を介して関節内に挿入され、炎症組織の除去や腱の修復を行います。この方法は回復が早く、侵襲が少ないという利点があります。

5. 予防と管理


四十肩、五十肩の予防には、定期的な運動による肩の柔軟性と強度の維持が重要です。また、長時間同じ姿勢でいることを避け、肩に違和感を感じる不自然な動作を続ける事は避けましょう。痛みが続いたり、肩の動きが悪くなってきた場合は、早めに整形外科専門医の受診をしましょう。
 
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このコラムは約5000字の読みやすい内容にまとめられており、一般の方々にとって役立つ情報を提供しています。中山クリニックの患者様や一般の方々に向けてお役立ていただければ幸いです。