中山クリニック

救急車を呼ぶべきか?医師が教える「命を守る」判断基準と#7119の賢い使い方

掲載日:2026.01.07(最終更新日:2026.01.08)

突然の体調不良や怪我に見舞われた時、
「救急車を呼ぶべきか、それとも自力で病院へ行くべきか」
と迷った経験はありませんか?
 
その一瞬の判断が、自分や大切な人の命運を分けることもあります。
しかし、日本の救急医療は今、大きな岐路に立たされています。

————目次————
1.逼迫する日本の救急医療:データで見る現状
2.#7119とは?あなたの迷いを解決する相談ダイヤル
3.#7119は本当に効果があるのか?データから読み解くその実力
4.救急車を呼ぶべき「危険なサイン」とは?
5.【緊急】脳梗塞のサインを見逃さないで!
6.救急車が有料化!?未来の医療を守るために
7.まとめ:いざという時のためのアクションプラン

1. 逼迫する日本の救急医療:データで見る現状

●タグ

「救急車は呼べばすぐに来てくれる」
という安心感は、もはや過去のものとなりつつあります。
 
総務省消防庁の最新の報告によると、2023年における救急車の現場到着までの全国平均時間は約10.0分でした[1]
これは、約20年前の平均約6分と比較して大幅に延伸しています。
この「数分の差」が、心停止や脳卒中といった一刻を争う病状において、生存率を大きく左右するという研究報告もあります[5]
 
出動件数も年々増加しており、2023年には過去最多の約764万件に達しました[1]
この背景には、高齢化社会の進展とともに、救急車の不適切な利用、いわゆる「コンビニ受診」のような軽症での利用が増えているという実態があります。
実際に、救急搬送された人の約半数は、入院を必要としない「軽症」であったという衝撃的なデータも存在します[2]
 

項目 2023年のデータ 備考
救急出動件数 約764万件 過去最多
現場到着所要時間(平均) 約10.0分 20年で約4分延伸
病院収容所要時間(平均) 約45.6分 現場での応急処置、搬送、受入先選定にかかる時間
搬送人員のうち軽症者の割合 約50% 入院の必要がない患者

出典: 総務省消防庁「令和6年版 救急・救助の現況」等[1]
 
このままでは、本当に緊急性の高い患者のもとへ救急車が到着するのが遅れ、救えるはずの命が失われてしまう「救急医療の崩壊」が現実のものとなりかねません。

2. #7119とは?あなたの迷いを解決する相談ダイヤル


そこで、私たちが知っておくべき重要な選択肢が「#7119」(救急安心センター事業)です。
これは、急な病気や怪我で「救急車を呼ぶべきか」「病院へ行くべきか」と迷った際に、専門家からアドバイスを受けられる電話相談窓口です[4]

#7119の主なサービス

●緊急度の判定:看護師などの相談員が症状を聞き取り、救急車がすぐに必要か、あるいは自家用車やタクシーで病院へ行くべきか、翌日まで様子を見ても良いかなどを判断してくれます。
 
●医療機関の案内:今すぐに受診できる、最寄りの医療機関を案内してくれます。
 
このサービスは24時間365日対応しており、現在では全国の人口の約8割をカバーする地域で導入されています[2]
ご自身の地域で#7119が利用できない場合でも、同様の救急相談ダイヤルが設けられていることが多いので、一度確認しておくことをお勧めします。

3. #7119は本当に効果があるのか?データから読み解くその実力


「相談件数が増えても、救急車の出動回数が減らなければ意味がないのでは?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。
確かに、高齢化の影響もあり、#7119導入後も救急出動件数自体は増加傾向にある地域もあります。
 
しかし、データを詳しく分析すると、#7119の重要な役割が見えてきます。
全国データでは、#7119を導入している地域は、導入していない地域に比べて救急出動件数の伸び率が明らかに抑制されているのです[2]
つまり、#7119が防波堤となり、救急医療のパンクを防いでいると言えます。
 
さらに特筆すべきは、その「トリアージ(重症度選別)の精度」です。
例えば、兵庫県の「はりま姫路総合医療センター」のデータでは、#7119で「緊急性が高い(赤)」と判断された患者の84%が入院に至っています[3]
これは、#7119が「本当に救急医療が必要な人」を的確に見抜き、迅速な救急搬送に繋げていることの証です。

4. 救急車を呼ぶべき「危険なサイン」とは?


#7119は非常に有用なサービスですが、ためらわずに119番通報をすべき危険なサインも存在します。以下のような症状が見られる場合は、直ちに救急車を呼んでください[4]

症状の種類 具体的な症状例
意識障害
  • 呼びかけに反応がない、意識が朦朧としている
呼吸の異常
  • 呼吸が苦しい、息ができない、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)がある
循環器系の異常
  • 突然の激しい胸痛、締め付けられるような痛み、冷や汗を伴う胸痛
脳血管系の異常
  • 突然の激しい頭痛、ろれつが回らない、言葉が出ない、顔の片側が歪む
その他の重篤な症状
  • 大量の出血、広範囲のやけど、けいれんが止まらない

 
これらの症状は、心筋梗塞や脳卒中、重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー)など、命に関わる病気のサインである可能性が非常に高いです。
「少し様子を見よう」という判断が、取り返しのつかない事態を招くことがあります。

5.【緊急】脳梗塞のサインを見逃さないで!


特に注意が必要なのが、脳梗塞のサインです。脳梗塞は時間との勝負であり、発症からいかに早く治療を開始できるかが、その後の人生を大きく左右します。
 
前述の「危険なサイン」の中でも、特に「手の異変」「足の異変」は重要な兆候です。
 
・突然、片方の腕や足に力が入らなくなる
・片方の手足がしびれる
・持っているものを落としてしまう
・歩こうとすると、片足がうまく動かない
 
これらの症状は、脳の血管が詰まり、手足の動きをコントロールする神経細胞にダメージが及んでいるサインかもしれません。
当院のYouTubeチャンネルでは、これらの危険なサインについて、より具体的に解説した動画を公開しています。
ご自身やご家族にこのような症状が現れた時にすぐ気づけるよう、ぜひ一度ご覧ください。

【動画で学ぶ脳梗塞の危険なサイン】

●手の異変に関する動画:
 
●足の異変に関する動画:
 
●血管が詰まる症状の動画:
 
●脳梗塞の前兆動画:
 
これらの症状に加えて、「顔の歪み」「ろれつが回らない」といった症状をチェックする「FAST(ファスト)」という確認方法は、脳卒中を早期に発見するための有効なツールとして知られています[6][7]
一つでも当てはまれば、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。

6. 救急車が有料化!?未来の医療を守るために


救急医療の逼迫を受け、一部の地域では、軽症と判断された場合の救急搬送を有料化する動きも始まっています。
これは、決して「命の選別」や「お金儲け」のためではありません。
限られた医療資源を、本当にそれを必要としている重症患者のために確保するための、苦肉の策なのです。
 
私たち一人ひとりが「#7119」を賢く利用し、救急車の適正利用を心がけること。
それが、日本の優れた救急医療システムを未来にわたって維持し、いざという時に自分や家族、そして社会全体を守ることに繋がるのです。
 
また、お子さんの急な体調不良で迷った場合は、「#8000」(子ども医療電話相談)という専用の相談窓口もあります。
こちらも併せて覚えておきましょう。

7. まとめ:いざという時のためのアクションプラン


今回の内容を、いざという時に役立つアクションプランとしてまとめます。
 
①危険なサイン(意識障害、激しい胸痛・頭痛、呼吸困難など)があるか?
YES → ためらわずに119番へ通報
 

②危険なサインはないが、どうすれば良いか迷うか?
YES → #7119(大人の場合)または #8000(子どもの場合)に電話して相談
 

③スマートフォンに「#7119」と「#8000」を登録しておく
緊急時に慌てないよう、今すぐ連絡先に登録しましょう。
 
このコラムが、皆さんの健康と安心な暮らしの一助となれば幸いです。ぜひ、ご家族やご友人にもこの記事や関連動画をシェアしていただき、救急医療の正しい知識を広めていきましょう。

参考文献

  1. 総務省消防庁. 「令和6年版 救急・救助の現況」の公表. 2025.
  2. 総務省消防庁. 救急安心センター事業(#7119)の普及促進に向けた検討会報告書. 2021.
  3. 第28回兵庫県救急・災害医療フォーラム「救急車の適正利用ご存じですか?#7119」
  4. 政府広報オンライン. もしものときの救急車の利用法 どんな場合に、どう呼べばいい?. 2016.
  5. Damdin S, et al. Effects of Emergency Medical Service Response Time on Prehospital Patient Outcomes. J Clin Med. 2025.
  6. Crause K, et al. The accuracy of the FAST stroke assessment in identifying stroke at call-taker level. Afr J Emerg Med. 2020;10(Suppl):S34-S38.
  7. Zang J, et al. Early identification of stroke symptoms and risk factors among community residents in China: a cross-sectional study. BMC Public Health. 2025.

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