中山クリニック

手関節の疾患

手根管症候群 ばね指 橈骨遠位端骨折 ガングリオン デュケルバン(狭窄性腱鞘炎)

手根管症候群

手根管症候群とは、手のしびれ感を訴えて整形外科を受診する最も一般的な疾患です。手根管とは、手首の部分にある骨と手根靭帯に囲まれた空間のことであり、 9本の指を曲げる腱と正中神経が通過します。この手根管内で、何らかの原因により正中神経が圧迫されると、手根管症候群が発生します。

症状

初期には示指、中指がしびれ、痛みがでますが、最終的には母指(親指)から環指の母指側の3本半の指がしびれます(正中神経の支配領域)。急性期には、この痛みやしびれは明け方に症状が増強することが多いです。手を振ったり、指を曲げ伸ばしするとしびれ、痛みは楽になります。手のこわばり感もあります。

保存療法紹介

治療は、症状の程度にかかわりなく、保存的治療から開始するのが原則です。ビタミン剤の服用、手関節の安静を保つ装具の装着も一般的に勧められていますが、ステロイドの手根管内の注射が奏功します。特に、最近ではステロイドの一種であるケナコルトの注射の有効性の報告が多く、当院でも積極的に行っています。

手術療法紹介

ステロイドの注射を数回行っても症状が軽快しない際には手術が勧められます。最近では手関節部と手掌部の2つの1cm 程度の切開より内視鏡下に靭帯を切る手術を行っています。術後の痛みが少なく早期の社会復帰が可能 という大きな利点があります。 手術自体は、1cm程度の切開で済み、所要時間も15分程度と短いため、日帰りでも行うことが可能です。術当日より水仕事以外は手の使用も可能です。

ばね指

ばね指とは、指の腱鞘炎のことです。筋肉と骨を結びつけている組織「腱」が通るトンネル部分「腱鞘」で炎症が起き、手のひら側の指の付け根に痛みが生じます。そのまま放っておくと腱や腱鞘が腫れて腱がうまく動かなくなり、ばねのようなかくかくとした動きが見られるようになります。ばね指の主な原因は、家事などによる指の使い過ぎです。また、更年期や妊娠・出産などでホルモンバランスが乱れる時期の女性や糖尿病などの持病を抱えている人にも多く見られます。

症状

指の付け根で屈筋腱と靱帯性腱鞘の間で炎症が起こると、“腱鞘炎”になり腱鞘の部分で腱の動きがスムーズでなくなり、指の付け根に痛み、腫れ、熱感が生じます。朝方に症状が強く、日中は使っていると症状が軽減することも少なくありません。進行するとばね現象が生じて“ばね指”となり、さらに悪化すると指が動かない状態になります。

保存療法紹介

保存的療法としては、局所の安静(シーネ固定も含む)や投薬、腱鞘内ステロイド注射(特にトリアムシノロンは有効)などがあります。この注射は有効で、おおむね3ヵ月以上は無症状なことが多いですが、再発することも少なくありません。痛みが起きたきっかけが無い方は、右肘外側部への負担が原因の一つなので、負担がかからない様にリハビリを行います。

手術療法紹介

ステロイド注射を行っても、症状の改善に乏しい場合や再発を繰り返すような場合には手術も検討します。手術は、痛みの元となっている腱鞘を切開し、その一部を切り離すことで、つらい症状を改善させることが可能です。手術自体は、1cm程度の切開で済み、所要時間も15分程度と短いため、日帰りでも行うことが可能です。多くの場合は、腱鞘を切開することで再発する恐れはほとんど無くなります。

橈骨遠位端骨折

橈骨遠位端骨折は、ころんで手をついた際におこる骨折で、頻度の高い疾患です。特に骨粗鬆症のある方では多発します。手のつき方や骨折線の入り方によって、様々な骨折のタイプがあります。

症状

手首の関節部の強い痛み、腫脹、関節可動域の制限が起こります。転位がある場合には変形も伴います。変形は手関節を含んで手が背側に転位し、フォークのように変形するタイプが多いです。また、近位の主骨片で、正中神経を直接圧迫したり損傷したり、腫脹に伴う手根管症候群により正中神経麻痺を合併することがあります。

保存療法紹介

骨折にほとんど転位のない場合は、ギプス固定を約4週間行います。 骨折に転位のある場合では、レントゲンの透視像を見ながら、徒手整復します。徒手整復で整復位が得られ、安定していれば、ギブス固定を行います。約4〜6週間固定を行います。

手術療法紹介

徒手整復しても良い整復位が得られないものや、すぐにまたずれてしまうような場合、また、関節内に骨折が及んでずれているものなどは、全身麻酔での手術が必要となります。手術で正確に骨片を整復し、プレートやスクリューなどを使ってしっかり固定します。しっかり固定されると、術後はギプス固定が不要となり、 ADLが著しく改善します。


橈骨骨折

橈骨骨折 術後

ガングリオン

ガングリオンはなかにゼリー状の物質の詰まった腫瘤です。典型的なものは手関節背側(甲側)に生じるガングリオンです。これは手関節の関節包に繋がっています。その他のガングリオンのできやすい場所としては、手首の母指側の掌側の関節包やばね指の生じる指の付け根の掌側の腱鞘のあるところです。

症状

関節の周辺や腱鞘のある場所に米粒大からピンポン玉大の腫瘤ができます。軟らかいものから硬いものまであります。通常は無症状なことが多いのですが、時々、神経のそばにできると神経が圧迫され、痛みやしびれ、運動麻痺などを起こします。手を使いすぎると腫瘤は大きくなることがあります。

保存療法紹介

ガングリオンは腫瘤のみで無症状なら、放置しても心配はありません。しかし、大きくなるもの、痛みが強いもの、神経が圧迫されて神経症状があるもの(痛みや運動障害など)は治療が必要になります。保存的療法としては、エコー下でガングリオンに注射針を刺して注射器で吸引し内容物を排出します。何回か吸引排出する治療を行ううちに治ることもあります。

手術療法紹介

繰り返し内容物が溜まるようなら、手術を行います。手術をしても再発する可能性もあります。再発を防止するためには、上記の茎を含めたガングリオンの摘出が必要であり、関節包の周囲に生じているガングリオン予備群の娘シストの存在にも留意しなければなりません。

デュケルバン(狭窄性腱鞘炎)

母指を広げると手首の母指側の部分に腱が張って皮下に2本の線が浮かび上がります。ドケルバン病はその母指側の線である短母指伸筋腱と長母指外転筋が手首の背側にある手背第一コンパートメントを通るところに生じる腱鞘炎です。妊娠出産期の女性や更年期の女性に多く生じます。手の使いすぎやスポーツや指を良く使う仕事の人にも多いのが特徴です。

症状

手首の母指側にある腱鞘とそこを通過する腱に炎症が起こった状態で、腱鞘の部分で腱の動きがスムーズでなくなり、手首の母指側が痛み、腫れが生じます。母指を広げたり、動かしたりするとこの場所に強い疼痛が走ります。

保存療法紹介

局所の安静、投薬、腱鞘内ステロイド注射などを行います。超音波検査などで腱鞘の炎症や損傷状況を確認し、治療をご提案していきます。軽度の狭窄性腱鞘炎に対しては、高周波温熱治療や超音波治療で患部の炎症を抑えていきます。また必要に応じて理学療法士が手首の痛みを発生させる原因となる体の使い方やバランスの不十分な部分を評価し、適切にリハビリテーションを行っていきます。

手術療法紹介

手術では、トンネルの屋根を開いて中の通り道を広げるように腱鞘を切開し、鞘を開きます。その際、腱鞘の中にある2つの腱を分けている壁も切除することとなります。局所麻酔による日帰り手術も可能ですが、入院をして手術を受けることもできます。