その膝・肩の関節注射、本当に効いてる?専門医が解説するヒアルロン酸・ステロイド・PRP注射の効果と副作用 💉👨⚕️
掲載日:2025.07.29(最終更新日:2025.07.29)
「もう一年も膝に注射を打っているのに、痛みがあまり変わらない…」
「肩が痛くて注射を勧められたけど、なんだか怖くて…」
「注射って、本当に効果があるの?」
長引く膝や肩の痛みで整形外科に通い、関節注射を経験した方、あるいはこれから受けようか悩んでいる方の中には、こんな風に感じている方も少なくないかもしれません。
実は、整形外科の注射治療は、「何を」「どこに」「どうやって」打つかで、その効果が天と地ほども変わってしまう世界なんです。
実際に、他院で効果がなかった患者さんが、注射の種類や打ち方を変えただけで、たった1回で痛みが劇的に改善したというケースも珍しくありません。
このコラムを最後まで読めば、あなたのその注射への不安や誤解がスッキリ解消し、「自分に必要な治療はこれだ!」と自信を持って選べるようになります。大切なご自身の体のために、一緒に学んでいきましょう!💪
【この記事でわかること】
✅ 整形外科で使う注射薬の正体(ヒアルロン酸、ステロイドなど)
✅ 注射が「効く場所」と「効かない場所」の違い
✅ 注射の目的は「治療」だけじゃない!?
✅ 効果が劇的に変わる最新の注射テクニック
✅ 知っておくべき副作用と、その安全対策
1.ポイント①【何を注射するの?】💉 注射薬の正体は5種類!
2.ポイント②【どこに注射するの?】🎯 狙うべきは痛みの根源!
3.ポイント③【なぜ注射するの?】🤔 目的は「治療」と「診断」
4.ポイント④【どうやって打つの?】💡 効果が劇的に変わる注射の手技!
5.ポイント⑤【危険はないの?】🛡️ 副作用と徹底した安全対策
6.まとめ:知識を持って、最高の治療を選ぼう!
ポイント①【何を注射するの?】💉 注射薬の正体は5種類!
まず、整形外科で使われる主な注射薬には、それぞれ全く違う役割を持つ5種類の薬があります。
✅ ステロイド注射:炎症を鎮める「消防士」🚒
五十肩で腕が上がらないほどの激痛や、指がカクカクする「ばね指」など、体の中で起きている「炎症」という火事を、非常に強力に消してくれるのがステロイドです。その鎮痛効果は絶大ですが、注意点も。
ステロイド注射 副作用:
とても強力な薬なので、同じ場所に何度も注射すると、腱や軟骨といった組織を弱くしてしまう可能性があります。実際に、アキレス腱の痛みにステロイド注射を繰り返した結果、腱が断裂してしまったという報告もあります[1]。そのため、専門医は回数を最小限に抑え、慎重に使用します。
✅ ヒアルロン酸注射:関節の動きを滑らかにする「潤滑油」⚙️
美容で有名なヒアルロン酸ですが、関節治療では、すり減った軟骨を保護し、関節の動きをスムーズにする潤滑油の役割を果たします。特に、変形性膝関節症でヒアルロン注射を膝に打つ治療は非常にポピュラーです。
・関節注射 ヒアルロン酸は、関節の中の環境を整え、痛みをじわじわと和らげていくイメージです。
・ヒアルロン酸注射 副作用:もともと体にある成分なので重い副作用は稀ですが、注射後に一時的に腫れたり、痛みが出たりすることがあります。また、ごく稀にアレルギー反応が報告されているため、何か異変を感じたらすぐに医師に相談しましょう。
✅ 生理的食塩水:癒着を剥がす「ハイドロリリース」💧
「ただの塩水でしょ?」と侮ってはいけません。これが今、非常に注目されている治療法です。肩こりや腰痛の原因が、筋肉を覆う「筋膜」の癒着(くっつき)である場合、この生理的食塩水を注入し、その水圧で優しく剥がしてあげるのです。これをハイドロリリースと呼び、神経の周りの癒着を剥がすことで、しびれの改善も期待できます。
✅ 麻酔薬:痛みの原因を探る「名探偵」🕵️
痛みを一時的に消すのはもちろんですが、麻酔薬には「診断」という、とても重要な役割があります。これについては後ほど詳しく解説しますね!
✅ PRP注射:自分の力で治す「再生医療」✨
今、最も注目されている最先端治療の一つがPRP注射です。これは、患者さん自身の血液を採取し、その中から傷を治す成分「血小板」だけをギュッと濃縮して、痛んだ部分に注射する方法です。
●自分の治癒能力を利用するため、副作用のリスクが非常に低いのが特徴です。
●膝の痛みに対しては、ヒアルロン酸注射よりも効果が高いという強力な研究結果も出ています[2]。
●テニス肘やアキレス腱炎、肉離れなど、様々な組織の修復を促す治療として、応用範囲が広がっています。
ポイント②【どこに注射するの?】🎯 狙うべきは痛みの根源!
「膝が痛いから、膝に注射する」…これは正解のようで、実は不十分です。
大切なのは、痛みの「本当の原因」となっている組織を正確に狙い撃ちすることです。
- 関節の中(関節内): 変形性膝関節症や五十肩など、軟骨のすり減りが原因の場合。
- 神経の周り: 椎間板ヘルニアなどで手足がしびれる場合、原因となっている神経のすぐそばに薬を届けます。
- 腱鞘(けんしょう): ばね指やテニス肘など、腱を包むトンネルが炎症を起こしている場合。
- 筋膜(きんまく): 肩こりや腰痛で、筋肉の表面の膜が癒着している場合。
- 血管: 最近の研究でわかってきた、治りにくい痛みの原因となる「もやもや血管」を治療する場合。
例えば、「膝が痛い」と思っていても、実は腰の神経が原因で膝に痛みが出ていることもあります。
その場合、いくら膝に関節注射をしても効果はありません。痛みの根源を正確に見極めることが、治療の第一歩なのです。
ポイント③【なぜ注射するの?】🤔 目的は「治療」と「診断」
注射の目的は、もちろん痛みを和らげる治療」が第一です。ステロイドやヒアルロン酸、PRP注射などは、この治療目的で行われます。
しかし、整形外科医がもう一つ、非常に重要視している目的があります。それが「診断」です。
ここで登場するのが、先ほどの「名探偵」こと麻酔薬です。
【Q&Aでわかる!診断的ブロック】
Q. 注射でどうやって診断するの?
A. 例えば、「腰も膝も痛い」という患者さんがいたとします。
痛みの親玉が腰なのか膝なのかハッキリしない時、まず原因として疑わしい腰の神経の近くに麻酔薬を注射します。
●もし、それで膝の痛みがスッと消えたら…?
→ 痛みの親玉は「腰」にあったと診断できます。治療すべきは膝ではなく腰、ということになります。
●もし、痛みが全く変わらなかったら…?
→ 痛みの原因は「膝」にある可能性が高いと判断できます。
ポイント④【どうやって打つの?】💡 効果が劇的に変わる注射の手技!
さあ、いよいよ本日の最重要ポイントです!
注射の効果を最大限に引き出し、かつ安全に行うための特別な方法。それは…
『エコー(超音波)を使って注射をすること』
これに尽きます。
「エコーって、妊婦さんがお腹の赤ちゃんを見る、あのエコー?」
その通りです!
このエコーを使うと、筋肉、神経、腱、血管などをリアルタイムの映像で見ながら注射ができます。
これをエコーガイド下穿刺(せんし)と言います。
実際の動画画像はこちら
【エコーガイド下穿刺のここがスゴい!✨】
✅ ピンポイントで薬を届けられる!
医師の経験や勘に頼るのではなく、モニターで体の中を見ながら、数ミリ単位の神経のすぐそばや、紙のように薄い筋膜の間に、ピンポイントで薬を届けることができます。この正確な肩 関節注射 手技や膝への注射が、治療効果を劇的に向上させます。
✅ 精度が格段にアップ!
ある研究では、股関節への注射を、医師の手の感覚だけで行った場合の成功率が72%だったのに対し、エコーを使った場合はほぼ100%正確に注射できたと報告されています[3]。
✅ 痛みが少なく、安全!
「関節注射は痛い」というイメージがあるかもしれません。しかし、エコーで神経や血管をリアルタイムで確認しながら針を進めることで、それらを避けることができます。これにより、余計な痛みを最小限に抑えることが可能です。
✅ 放射線被ばくの心配ゼロ!
体の深い場所への注射はレントゲンを使って確認することもありましたが、これには放射線被ばくが伴いました。エコーは超音波なので、体に全く害がなく、安心して何度でも使用できます。
質の高い注射治療において、もはやエコーは欠かせない存在なのです。
ポイント⑤【危険はないの?】🛡️ 副作用と徹底した安全対策
どんなに良い治療でも、リスクを正しく理解することはとても大切です。
✅ 注射の副作用について
●ステロイド注射 副作用
前述の通り、強力な分、繰り返しの使用は組織を弱くするリスクがあります。専門医は、そのリスクを十分に理解し、必要最低限の使用にとどめます。
●ヒアルロン酸注射 副作用
重い副作用は稀ですが、アレルギー反応の可能性はゼロではありません。特に股関節に使うヒアルロン酸には鎮痛剤が配合されているものがあり、その結合成分にアレルギーを起こす可能性が指摘されています。
✅ 最も注意すべきリスクは「感染」
注射で最も怖いのは、針を刺した場所から体の中にばい菌が入ってしまう感染です。
これは非常に稀ですが、一度起こると大変なことになる可能性があります。
だからこそ、当院では感染対策委員会を設置し感染対策をアップデートしながら徹底しています。
【クリニックの徹底した感染対策】
・ディスポーザブル製品の使用: 注射器や針はもちろん、皮膚を消毒するアルコール綿、イソジン消毒など、すべて一回きりの使い捨てです。
・二重の消毒: 関節内注射や手術では、速乾性のアルコール消毒の後、さらに殺菌力の高い消毒薬(イソジンなど)を重ねて使用し、皮膚を徹底的に清潔な状態にしてから注射を行います。
こうした基本的なことを、当たり前に、そして徹底的に行うことで、感染のリスクは限りなくゼロに近づけることができるのです。
まとめ:知識を持って、最高の治療を選ぼう!
最後に、今日の5つのポイントを振り返りましょう。
- 注射薬の種類を知ろう:
ステロイド、ヒアルロン酸、PRPなど、役割は様々。 - 注射場所が重要:
痛みの原因を正確に狙うことが効果のカギ。 - 注射の目的は2つ:
「治療」だけでなく、原因を探る「診断」も。 - エコーガイド注射を選ぼう:
PRP注射や肩、股関節には確実・安全・低侵襲な最新の手技。 - リスクと対策を理解しよう:
副作用を知り、感染対策が徹底された施設を選ぶ。
注射治療は、「どうせ効かない」「なんだか怖い」と決めつけてしまうには、あまりにもったいないです!
最新の注射治療は、あなたの長年の痛みを解決してくれる可能性を秘めた強力な味方です。
痛みでお困りの方は、エコーを使った質の高い注射治療を行う整形外科専門医にご相談ください。
肩の痛み、膝の痛みでお困りの方はいつでもご相談ください。
この記事の元になった、中山先生の分かりやすい解説動画もぜひご覧ください!
▶️ YouTube動画の視聴:気をつけて!整形外科の注射治療 大事な5つのポイント
【引用文献】
- Vallone G, Vittorio T. Complete Achilles tendon rupture after local infiltration of corticosteroids in the treatment of deep retrocalcaneal bursitis. J Ultrasound. 2014 Jan 29;17(2):165-7.
- Xu H, Shi W, Liu H, Chai S, Xu J, Tu Q, et al. Comparison of hyaluronic acid and platelet-rich plasma in knee osteoarthritis: a systematic review. BMC Musculoskelet Disord. 2025 Mar 11;26(1):236.
- Hoeber S, Aly AR, Ashworth N, Rajasekaran S. Ultrasound-guided hip joint injections are more accurate than landmark-guided injections: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2016 Apr;50(7):392-6.