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足の血管が詰まる直前に出る4つの危険サイン〜ガンより怖い末梢動脈疾患を見逃すな!〜

掲載日:2025.06.02(最終更新日:2025.06.13)

足の血管が詰まると、ガンよりも生存率が低い
 
この衝撃的な事実をご存知でしょうか。多くの方が「血管が詰まる」と聞くと心筋梗塞や脳梗塞を思い浮かべますが、実は足の血管が詰まる病気は、それ以上に深刻な問題なのです。
 
足の血管が詰まって手術を受けた患者さんの1年後生存率は62.9%、2年後の生存率はわずか46.3%という研究結果があります。これは、ガン全体の5年生存率66%よりも低い数値です。つまり、足の血管が詰まる病気は、多くのガンよりも生命予後が悪いということを意味しています。

————目次————
1.見過ごされがちな「足の血管が詰まる症状」の恐ろしさ
2.なぜ足の血管が詰まると命に関わるのか?
3.早期発見で命を守る!4つの危険サインを知れば予防できる
4.医学的根拠に基づいた確実な情報をお届け
5.足の血管が詰まる直前に出る4つの危険サイン
  -危険サイン1
  -危険サイン2
  -危険サイン3
  -危険サイン4
6.診断方法:どうやって調べるのか?
7.末梢動脈疾患の原因とリスク要因
8.閉塞性動脈硬化症 治療方法
9.自分でできる予防法
10.末梢動脈疾患 症状 チェックリスト
11.まとめ

見過ごされがちな「足の血管が詰まる症状」の恐ろしさ


足の血管が詰まる病気は、医学的には「下肢閉塞性動脈硬化症」または「末梢動脈疾患(PAD)」と呼ばれています。この病気の最も恐ろしい点は、初期段階では症状が軽微で見過ごされやすいことです。
 
日本では推定約500万人がこの病気に罹患しており、特に65歳以上では10人に1人の割合で発症しています。しかし、症状がないか軽いために、多くの方が自分が病気だと気づいていません。
 
最新の大阪大学の研究では、足の血管が詰まる病気の患者さんは、心臓の血管が詰まる病気(狭心症など)の患者さんと比べて、治療後の死亡率が2.91倍も高いことが明らかになっています[1]

なぜ足の血管が詰まると命に関わるのか?


ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれ、下半身の血液を心臓に戻す重要な役割を担っています。足の血管が詰まると血流が悪くなり、最終的には足の切断が必要になる場合があります。そして、足を切断すると全身状態が急激に悪化し、生命予後に深刻な影響を与えるのです。

早期発見で命を守る!4つの危険サインを知れば予防できる


しかし、安心してください。この恐ろしい病気も、早期に発見すれば適切な治療で進行を防ぐことができます。重要なのは、「血管が詰まる前兆」や「血管が詰まるサイン」を正しく理解し、見逃さないことです。
 
このコラムでは、足の血管が詰まる直前に現れる4つの危険サインを詳しく解説します。これらのサインを知ることで、早期発見・早期治療につながり、足の切断や命の危険を回避できる可能性が大幅に高まります。
 
また、簡単にできるセルフチェック方法や、自宅でできる予防法もお伝えします。最後まで読んでいただければ、あなたとあなたの大切な人の健康を守る知識が身につくはずです。

医学的根拠に基づいた確実な情報をお届け


本記事の内容は、整形外科専門医として30年以上の臨床経験を持つ医師の知見と、最新の医学研究に基づいています。末梢動脈疾患の診断と治療に関する国内外の研究論文を参考に、科学的根拠のある情報のみをお伝えします。特に、閉塞性動脈硬化症の余命に関するデータや、間欠性跛行などの初期症状については、実際の臨床現場での経験と研究結果を組み合わせて解説しています。

足の血管が詰まる直前に出る4つの危険サイン

閉塞性動脈硬化症の症状は、病気の進行に応じて段階的に現れます。以下の4つのサインを順番に理解し、早期発見につなげましょう。

危険サイン1:足の冷えやしびれ(初期症状)


【症状の特徴】
・片方の足だけが冷たい
・靴下を履いても足先が冷たいまま
・夜になっても冷たさが取れない
・足先のしびれや感覚が鈍くなる

単なる冷え性との違い

多くの女性が経験する一般的な冷え性とは異なり、血管が詰まることによる冷えには明確な特徴があります。最も重要なのは「左右差がある」ことです。片方の足だけが明らかに冷たい場合は、その足の血管に問題がある可能性が高いです。
 
また、血管が詰まることによる冷えは、靴下を履いても改善せず、入浴後も冷たさが持続するという特徴があります。これは血流が悪くなり、足先の組織に十分な酸素や栄養が届かなくなっているサインです。

閉塞性動脈硬化症 セルフチェック方法

簡単なセルフチェック方法として、以下を試してみてください:
 
1. 両足を同時に触って温度差を確認する
2. 足の指先の色を比較する(白っぽい、青っぽい色になっていないか)
3. 足の爪の成長速度を観察する(血流が悪いと爪の成長が遅くなる)

危険サイン2:間歇性跛行(進行した症状)

閉塞性動脈硬化症 間欠性跛行とは


間歇性跛行は、「歩くと足が痛くなるけれど、少し休むと楽になる」という特徴的な症状です。これは閉塞性動脈硬化症の代表的な症状の一つで、病気の進行を示す重要なサインです。
 
【具体的な症状】
・一定距離(100〜500メートル)歩くとふくらはぎや太ももに痛みが出る
・痛みのため歩行を中断せざるを得ない
・数分間休息すると痛みが和らぎ、再び歩けるようになる
・痛みが出る距離がだんだん短くなる

なぜこの症状が起こるのか

歩行時には筋肉が多くの酸素を必要としますが、血管が狭くなっていると十分な血液が届きません。そのため、筋肉が酸素不足になり痛みが生じます。休息すると筋肉の酸素需要が下がるため、痛みが和らぐのです。
 
【進行の目安】
最初は500メートル歩けていたのに、300メートル、100メートルと、だんだん痛みが出る距離が短くなってきたら、病気が確実に進行している証拠です。この段階で医療機関を受診することが極めて重要です。

危険サイン3:安静時痛(重篤な症状)


【症状の特徴】
・じっとしていても足が痛む
・夜間に痛みが強くなる
・痛みのため睡眠が妨げられる
・足を下げると楽になる

なぜ夜間に痛みが強くなるのか

夜間に痛みが強くなるのは、横になることで足への血流がさらに減少するためです。そのため、多くの患者さんは痛みを和らげるために椅子に座って寝るようになります。
 
この段階では、血管がかなり狭くなり、安静にしていても足の組織に十分な酸素が届かなくなっています。早急な医療機関の受診が必要な状態です。

危険サイン4:潰瘍や皮膚の壊死(最終段階)


【最も危険な症状】
・足の指や足首に小さな傷ができても治らない
・皮膚が黒くなってくる
・傷口がじくじくしている
・悪臭を伴う場合がある

閉塞性動脈硬化症 潰瘍と壊死の危険性

この段階になると、足の組織に全く血液が届かなくなり、組織が死んでしまいます(壊死)。閉塞性動脈硬化症 壊死が進行すると、感染症を起こしやすくなり、最終的には足の切断が必要になる可能性が高まります。

閉塞性動脈硬化症 切断のリスク

足を切断すると、前述したように2年後の生存率は約46%と非常に厳しい状況になってしまいます。そのため、最初の3つの危険サインの段階で気づいて対処することが極めて重要なのです。

診断方法:どうやって調べるのか?

閉塞性動脈硬化症 ABI検査


ABI(Ankle Brachial Index)検査は、足と腕の血圧の比を測定する簡単な検査です。正常値は1.0〜1.3で、0.9以下の場合は末梢動脈疾患が疑われます。
 
【ABI検査の特徴】
・痛みがない
・15分程度で終了
・外来で簡単に実施可能
・スクリーニング検査として有用
 
【ABI検査結果画面】
 

その他の検査方法


・超音波検査(エコー):血管の状態を直接観察できる検査で、血管の狭窄や閉塞の程度を評価できます。
・MRA(MR血管造影):造影剤を使わないMRI検査で、血管の形態を詳細に観察できます。体への負担が少ない検査です。
・CT血管造影:造影剤を使用してより詳細な血管の状態を確認できます。
・カテーテル検査:最も精密な検査で、治療も同時に行える場合があります。

末梢動脈疾患の原因とリスク要因

閉塞性動脈硬化症 原因


主な原因は動脈硬化です。血管の内側に脂肪やコレステロールがたまって、血管が狭くなったり詰まったりします。
 
【高リスク要因】

  1. 喫煙:最も重要なリスク要因
  2. 糖尿病:血管へのダメージが大きい
  3. 高血圧:血管壁への負担が増加
  4. 高コレステロール血症:動脈硬化を促進
  5. 高齢:加齢とともにリスクが上昇
  6. 男性:女性よりもリスクが高い
  7. 家族歴:遺伝的要因も関与

閉塞性動脈硬化症 治療方法

保存的治療


【薬物療法】
・抗血小板薬(血液をサラサラにする薬)
・血管拡張薬
・コレステロール低下薬
 
【運動療法】
米国心臓協会の研究によると、運動療法は非常に高いエビデンスレベルの効果があります[2]。具体的には:
ウォーキング:1日30分、週3回以上
・足首の運動:血流改善効果
片足立ち:下肢筋力強化[3]
・つま先立ち:ふくらはぎの筋力強化

侵襲的治療


【血管内治療】
・バルーン拡張術
・ステント留置術
 
【外科的治療】
・バイパス手術
・血栓除去術

自分でできる予防法

生活習慣の改善

1. 禁煙:喫煙は血管を収縮させ、動脈硬化を促進します。禁煙は最も重要な予防策です。
 
2. 食生活の改善:
・塩分制限
・飽和脂肪酸の制限
・野菜・果物の摂取増加
・魚類の積極的摂取
 
3. 適度な運動:前述した運動を1日20分程度、週3回以上続けることで効果が期待できます。
 
4. 定期的な検診:血圧、血糖値、コレステロール値の定期的なチェックが重要です。
 
5. フットケア
・毎日足を観察する
・清潔に保つ
・適切な靴を選ぶ
・小さな傷も軽視しない

末梢動脈疾患 症状 チェックリスト


以下の項目に当てはまる場合は、医療機関での検査をお勧めします:
 
□ 片方の足だけが冷たい
□ 歩くと足が痛くなり、休むと楽になる
□ 夜間に足が痛くて目が覚める
□ 足に治りにくい傷がある
□ 足の爪の成長が遅い
□ 足の毛が薄くなった
□ 足の皮膚が青白い
□ 足の脈が触れにくい

まとめ


足の血管が詰まる病気(末梢動脈疾患・閉塞性動脈硬化症)は、ガンよりも生存率が低い深刻な病気です。しかし、早期に発見すれば適切な治療で進行を防ぐことができます。
 
【重要な4つの危険サイン】
1. 足の冷えやしびれ:左右差がある場合は要注意
2. 間歇性跛行:歩くと痛み、休むと楽になる
3. 安静時痛:じっとしていても痛い
4. 潰瘍や皮膚の壊死:治りにくい傷
 
これらの症状を感じたら、決して軽視せず、早めに医療機関を受診してください。ABI検査などの簡単な検査で診断が可能です。
 
また、日常生活では禁煙、適度な運動、食生活の改善、定期的な検診を心がけることで予防効果が期待できます。

中山クリニックでの専門検査


明石市の中山クリニックでは、末梢動脈疾患の早期発見のためのABI検査やMRA検査を実施しています。これらの検査は痛みがなく、短時間で終了します。
 
・ABI検査:足と腕の血圧比を測定し、血管の狭窄を評価
・MRA検査:造影剤を使わずに血管の状態を詳細に観察
 
少しでも気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
 
あなたの健康な毎日のために、今すぐ行動を起こしましょう。早期発見が、あなたの未来を変えるかもしれません。

引用文献

  1. Takahara M. et al. Mortality after revascularization for lower extremity artery disease versus coronary artery disease. European Heart Journal. 2024 May 7.
  2. Hallak AO. et al. Exercise Therapy in the Management of Peripheral Arterial Disease. Mayo Clin Proc Innov Qual Outcomes. 2023 Oct 3;7(5):476-489.
  3. Heffernan KS. et al. Effect of single-leg resistance exercise on regional arterial stiffness. Eur J Appl Physiol. 2006 Sep;98(2):185-90.

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