その腰痛、本当に大丈夫?見逃し厳禁!危険な5つの警告サイン
掲載日:2025.05.27(最終更新日:2025.05.27)
日常生活の中で「腰がズキッと痛む」「朝起きると腰痛い」「長時間座っていると腰の痛みを感じる」など、腰痛に悩んだ経験を持つ方は多いのではないでしょうか。実は、日本人の約90%が人生で一度は腰痛を経験するといわれており、厚生労働省の調査でも男女を問わず自覚症状の第一位が「腰痛」です。こうした「腰痛の原因」の多くは、筋肉の疲労や関節・靭帯の軽い炎症であり、適切な休息やセルフケアによって自然と回復していくことが少なくありません。
しかし、その「腰の痛み」は本当に大丈夫でしょうか。中には放置すると命にかかわる重大な病気が隠れている場合もあり、これを見逃さないために押さえておきたいのが「腰痛 レッドフラッグ」という概念です[1]。これは、ただの腰痛と思っていたら実は命に直結する病気や重度の障害をもたらす病気が潜んでいる可能性を示す腰痛の危険信号のことを指します。症状によっては、早期診断・早期治療を逃すと後遺症が残ったり、最悪の場合は命を落とす危険もあるのです。
本稿では、「腰痛 危険度チェック」として5つの警告サインを解説します。このサインを知っておくことで、「腰痛がひどい…」と感じつつも「そのうち治るだろう」と安易に考えることを防ぎ、手遅れになる前に適切な治療を受ける手助けができます。今回、紹介する病気は全て実際に当院で診察した症例と画像です。あなたやご家族の健康を守るため、ぜひ最後までお読みください。
1.動くとズキッと強く痛む:脊椎圧迫骨折の可能性
2.今まで感じたことのない激痛:大動脈解離を疑う
3.腰痛と発熱がセット:化膿性脊椎炎という感染症かも
4.安静にしていても痛む・体重が減ってきた:転移性骨腫瘍や膵臓癌の可能性
5.腰痛足の痺れや排泄障害:馬尾症状による神経圧迫
6.腰痛 レッドフラッグサインを知って早期受診を
7.レントゲンだけでは不十分?MRIの役割
8.まとめ:見逃さないで!「たかが腰痛」の裏に潜む重大疾患
9.早期発見・早期治療で安心を手に入れよう
1. 動くとズキッと強く痛む:脊椎圧迫骨折の可能性
腰痛があるきっかけを境に「体を動かすたびに腰の痛みが走る」場合、まず疑いたいのが脊椎圧迫骨折です。特に高齢の方や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を抱えている場合、ちょっと尻もちをついたり、重い荷物を持ち上げたり、あるいは椅子に勢いよく座った程度でも背骨の椎体がつぶれてしまうことがあります。
骨がつぶれると、骨の変形が進んで神経を圧迫し、腰痛に加えて足のしびれや麻痺が現れる場合も少なくありません。一方で、初期の圧迫骨折はレントゲン検査でははっきりと映らないケースがあり、後から撮り直したときに骨折が判明することがあります。そこで重要になるのがMRI検査です。MRIなら骨の中の骨折線や炎症の程度をより正確に把握でき、新しい骨折か古い骨折かの区別も付きやすくなります。
「ある動作の後から腰痛い状態が続いている」「起き上がったり寝返りを打ったりするたびにズキッとくる」という方は、早めに医療機関を受診してこの可能性を確認しましょう。
2. 今まで感じたことのない激痛:大動脈解離を疑う
腰痛というと骨や筋肉の問題を想像しがちですが、実は命に直結する心血管疾患が隠れていることもあります。特に注意すべきが大動脈解離です。心臓から全身に血液を送る最も太い血管である大動脈の壁が裂けてしまうこの病気は、「裂けるような激痛」や「今まで味わったことのないほどの強い痛み」が背中や腰に突然走るのが大きな特徴です。
高血圧や動脈硬化のリスクが高い方が発症しやすいとされており、発症から短時間で急激に状態が悪化することも少なくありません。もし、「腰痛がひどい」というレベルを超え、「立っていられないほどの激痛」が突然あらわれた場合、ただちに救急受診が必要です。
整形外科ではなく循環器内科や心臓血管外科の領域ですが、初発症状として腰や背中の痛みを訴えるケースもあるため、強烈な痛みの際には迷わず対応を求めましょう。
3. 腰痛と発熱がセット:化膿性脊椎炎という感染症かも
次に、「腰痛と発熱が同時に起こった場合」や「しばらく安静にしていても熱が下がらず痛みが引かない場合」には、化膿性脊椎炎を疑う必要があります。これは、細菌が血液を通して背骨や椎間板に感染し、膿(うみ)が溜まってしまう深刻な病気です[2]。いわゆる腰痛発熱や腰痛熱と呼ばれる状態で、38度を超える高熱や寒気、夜間にもズキズキと痛むなどの症状を伴います。
とくに、糖尿病や免疫力が低下している方、高齢の方、あるいは治療していない虫歯がある方などは要注意です。放置すると背骨が破壊されたり、感染が神経にまで広がって麻痺を引き起こしたり、全身の感染症(敗血症)へと進展して命にかかわることもあります。血液検査やMRI検査を組み合わせれば早期に発見できるため、単なる風邪と思わずに医療機関に相談しましょう。
4. 安静にしていても痛む・体重が減ってきた:転移性骨腫瘍や膵臓癌の可能性
ほとんどの「腰痛の原因」は、姿勢や筋肉疲労など良性のものです。しかし、「体を動かさなくても腰の痛みが続く」「夜間や安静時にかえって痛みが増す」「体重が減少し、食欲不振や全身の倦怠感を伴う」などの症状がある場合は、腰の痛みでがんを疑うことが大切です。
中でも代表的なのが、背骨にがんが転移する転移性骨腫瘍です。肺がんや乳がん、前立腺がんなどは骨に転移しやすいとされており、背骨に転移すると「癌の腰痛とは、どんな痛みなのか?」という疑問が出てきますが、痛み止めが効きにくい場合が多く、じわじわと腰痛が強くなるのが特徴的です。また、「膵臓癌(すいぞうがん)」は背中から腰にかけて重い痛みを感じることがあり、腰痛のきっかけで発見される例もあります。
これらは見つかった段階で進行が進んでいることも多く、骨が脆くなって脊椎圧迫骨折を起こしやすくなったり、腫瘍が神経を圧迫して麻痺を起こす危険もあります。少しでも「おかしい」と思ったら、早めに画像検査を受けましょう。検査ではMRIに加えてCTやPET-CTなどを行う場合もあります。症状が悪化する前に「これは普通じゃない」と気づくことが大切です[3]。
5.腰痛足の痺れや排泄障害:馬尾症状による神経圧迫
「腰痛」とともに「両足のしびれ」や「力が入りにくい」「お尻の感覚が鈍い」と感じたり、さらに「排尿や排便をコントロールしづらい」「尿が出にくい、逆に漏れてしまう」という状態に気づいたら、馬尾症状を疑いましょう。これは、背骨の中を通る馬のしっぽのような神経(馬尾神経)が圧迫されることで起こる深刻なトラブルです。
原因としては、大きな腰椎椎間板ヘルニアや、脊柱管狭窄、腫瘍などが神経を強く圧迫するケースが多く、医療の現場では緊急手術の対象とされる場合も少なくありません。放置すると麻痺や排泄障害が後遺症として残ることもあるため、「腰痛足の痺れはよくあること」などと甘く見ないことが重要です。もし排尿や排便に異常を感じるほどの症状がある場合は、即座に整形外科を受診してください。
6. 腰痛 レッドフラッグサインを知って早期受診を
ここまで紹介した5つの症状は、 「腰痛 レッドフラッグサイン」として医療ガイドラインでも取り上げられています[1]。以下に整理すると、いずれも「普通の腰痛」とは異なる、見逃せない警告サインです。
1. 動くとズキッと強い痛み
– 例:脊椎圧迫骨折
2. 今まで感じたことのない激痛
– 例:大動脈解離
3.発熱を伴う腰痛(腰痛と発熱)
– 例:化膿性脊椎炎
4. 安静時や夜間にも痛む・体重減少
– 例:転移性骨腫瘍、膵臓癌
5. 足のしびれ・排泄障害
– 例:馬尾症状(重度の腰椎椎間板ヘルニアなど)
このような「腰痛 レッドフラッグ」の背景には、後遺症や生命にかかわる病気が隠れていることがあります。もし一つでも当てはまる場合には、しばらく様子を見ようで終わらせず、できるだけ早く検査を受けることが重要です。
7. レントゲンだけでは不十分?MRIの役割
腰痛を診断する場合、まずはレントゲン撮影が一般的ですが、レントゲンは骨の状態を大まかに見るのに適しているものの、骨折のごく初期や炎症の範囲、腫瘍や神経の圧迫までははっきりわかりません。そこで、腰痛 レッドフラッグ ガイドライン[3]でも示されているように、危険サインがある場合はMRI検査を行うことが推奨されています。MRIなら、骨の内部や椎間板、神経組織、腫瘍、化膿など、レントゲンでは写りにくい部分の状態を鮮明に把握できます。
8. まとめ:見逃さないで!「たかが腰痛」の裏に潜む重大疾患
以上、腰痛の危険な信号を示す5つの症状を紹介しました。私たちは「腰痛」=「よくある痛み」と考えがちですが、実際には「脊椎圧迫骨折」「化膿性脊椎炎」「転移性骨腫瘍」「膵臓癌」「馬尾症状」など、早期に対処しないと重大な結果を招く病気が隠れている可能性があります。
「腰痛いなぁ…」と思っても、自然に良くなるケースが多いからと放置してしまうこともあるでしょう。けれども今回の5つのサイン(腰痛 レッドフラッグサイン)のいずれかに該当するなら、腰痛の原因を徹底的に調べることが大切です。特に発症から早い段階でMRI検査を受けると、原因追及と正確な治療方針の確立につながります。
9. 早期発見・早期治療で安心を手に入れよう
大切なのは、「これは危険かもしれない」と早く気づいて行動することです。今回のコラムを読んで「もしかして?」と思ったら、軽視せずにまず医療機関を受診してみましょう。一般的なぎっくり腰や軽度の腰痛ならそれで安心できますし、もし重大な病気が隠れていたとしても、早期発見・早期治療が重症化を防ぎます。
MRIを行えば、レントゲン検査ではわからない背骨・椎間板・神経・腫瘍などの状態をしっかりと評価できます。症状に応じて最適な治療を受けることで、あなたの健康と将来を守ることにつながるでしょう。「たかが腰痛」ではなく「もしかすると重大疾患のサインかも」と意識を変えて、ぜひ早めの対応を心がけてください。
引用文献
- Verhagen AP, et al. Red flags presented in current low back pain guidelines: a review. Eur Spine J. 2016 Sep;25(9):2788-802.
- Romagna A, et al. Oral Cavity Infection: An Underestimated Source of Pyogenic Spondylodiscitis? J Neurol Surg A Cent Eur Neurosurg. 2018 May;79(3):218-223.
- 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/腰痛診療ガイドライン策定委員会 編. 腰痛診療ガイドライン2019 改訂第2版. 東京: 南江堂; 2019.
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