中山クリニック

【骨粗鬆症の注射】月1回・半年に1回の最新治療薬 一覧と費用まとめ 〜 骨密度上げる薬ランキング:医師が解説

掲載日:2025.01.27

みなさん、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)という言葉を聞いたことはありますか?
 
年齢を重ねるとともに骨がもろくなってしまうこの病気。日本では高齢化に伴い患者数が年々、増えており、「いつの間にか骨折」しているケースが多いことが問題視されています。もし骨が折れると動けなくなり、日常生活の質が一気に下がってしまう可能性があるため、早めに対策をとることが大切です。
 
今回のコラムでは、骨粗鬆症の注射薬 骨密度を上げる薬 ランキングというテーマで、骨粗鬆症の治療方法、とくに注射による治療を中心に解説します。近年、骨粗鬆症の注射薬は著しく進化しており、「骨を壊されるのを防ぐ」だけでなく「骨を作る力を高める」という作用をあわせ持つ新しいタイプも登場しています。

————目次————
1.骨粗鬆症とは?
2.骨粗鬆症を放置するリスク
3.骨粗鬆症に対する治療の基本
4.注射薬の利点
5.注射の種類
6.骨粗鬆症 治療薬 ランキング(骨密度を上げる効果という視点)
7.注射の適応・効果・終わった後はどうする?
8.Q & A
9.まとめ
10.引用文献

1. 骨粗鬆症とは?


骨粗鬆症は、骨の中がスカスカになり、骨折しやすくなる病気です。とくに閉経後の女性で急激に進みやすいとされますが、男性や若年層でも生活習慣やホルモンバランスによって発症し得ます。

危険性の高い骨折

●脊椎椎体骨折:背骨の椎体がつぶれるように折れて、腰痛や背中の痛みを伴います。姿勢が悪くなったり、内臓を圧迫したりする場合も。

●大腿骨頚部骨折:股関節付近が折れるため、痛みが強く動けなくなります。入院や手術、長期のリハビリを要します。高齢者では、寝たきりのきっかけになることが非常に多いです。

●骨盤骨折:お尻の痛みがいつまでも続きます。少し歩くと痛みが強くなり、仰向けや横向きで寝ても痛みがあります。高齢者の場合、診断が難しく、MRIやCTで確定診断となることがあります。

2. 骨粗鬆症を放置するリスク


骨粗鬆症を放置して最も懸念されるのは脊椎椎体骨折や大腿骨頚部骨折など、骨が支えきれずに折れる骨折です。高齢になると、つまづいて転倒する、尻もちをつくと簡単に骨折しますし、知らないうちに背骨が折れているという「いつの間にか骨折」も珍しくありません。背骨の椎体が圧迫されて折れる「圧迫骨折(あっぱくこっせつ)」や、大腿骨頚部(太ももの付け根部分)が折れる「大腿骨頚部骨折」は、高齢者の寝たきりを引き起こす主な原因の一つ。こうした骨折は痛みが長引き、歩行能力が低下し、日常生活にも大きな支障をもたらします。
 
もし骨折によって長期間寝たきり状態になると、筋力や体力が落ちるだけでなく、精神的にも落ち込み、転倒を恐れて外出せずに自宅に引きこもるリスクがあります。骨粗鬆症の予防・改善は、人生の質(QOL)を保つうえでも非常に重要と言えるでしょう[1]

3. 骨粗鬆症に対する治療の基本

「骨粗鬆症を防ぎたい」

「骨粗鬆症と診断されたけれど、どんな治療があるの?」

と感じている方は、まず骨粗鬆症の治療薬を正しく知っておきましょう。近年では内服薬(飲み薬)と並行して、注射薬にもさまざまな選択肢が登場してきています。

●内服薬

骨を壊す破骨細胞を抑制し、骨密度を保ちます。胃腸障害がある方や飲み忘れが多い方には不向きな場合もあります。

●注射薬

注射を打つ回数は、毎日あるいは週に1,2回の自己注射、月1回、半年に1回、さらには年1回など、さまざまな種類の注射薬があります。飲み忘れの心配がないことに加え、骨密度の高い改善効果が期待できるものもあり、選択肢が広がっています。
 
今回は、注射薬に焦点を当てて解説していきます。

4. 注射薬の利点


骨粗鬆症のビスホスネート内服薬は、副作用として胸やけや不快感、胃もたれなど逆流性食道炎の症状、起床時にすぐ服用して30分飲食できない、しばらく横になれないなどの制限がありますが、注射薬にはその副作用や服用後の制限がなく、飲み忘れの心配もありません。また、骨形成促進効果を持つ薬剤は注射薬しかないため、重度の骨粗鬆症や高齢者で少しの外力で骨折する脆弱性骨折などの患者さんには、より高い骨密度改善が見込まれます。

5. 注射の種類

①ビスホスホネート製剤

●元々は飲み薬として知られているビスホスホネート系ですが、点滴や注射の形で使えるタイプもあります。

●4週1回(ボナロン点滴)月1回(ボンビバ静注)または年1回(リクラスト点滴)の頻度で投与できるものもあり、通院回数を減らしたい方、あるいは通院が困難である方に適しています。

●点滴後にインフルエンザ様症状(発熱やだるさ)が出る人もいるので、事前に医師への確認が必要です。

●顎骨壊死(がっこつえし)というまれな副作用が報告されていますが、最新のガイドラインでは抜歯の際に「休薬の必要性(いわゆる“薬剤休薬期間”)」は不要とされています[2]。必要に応じて歯科受診や口腔内のメンテナンスを行いながら治療を継続します。

●価格:月 約1000円(1年間 約12000円)

②抗ランクル製剤(デノスマブ)

●商品名プラリアで半年に1回の皮下投与で効果が続くため、通院は年2回程度で済みます。

●骨吸収を促すRANKL(ランクル)という物質をブロックすることで、骨密度を改善し骨折リスクを下げます。

●低カルシウム血症(血液中のカルシウム値が低くなる)を起こす場合があるため、注射1週後に血液検査で確認します。カルシウムやビタミンDのサプリメントで不足を補うなど、医師の指示に従うことが大切です。

●関節リウマチの骨びらん(骨の炎症)にも保険適応となっており、効果があります。

価格:6ヶ月 約8000円(1年間 約16000円)

③PTH製剤(テリパラチド)

●副甲状腺ホルモン(PTH)に着目した薬で、骨芽細胞を強力に活性化して骨形成を促す「形成促進薬」。

●毎日自己注射タイプ(フォルテオ、オスタバロ)や週1,2回注射(テリボン)などがあり、多発性の脊椎椎体骨折や椎体骨折の術後など重症の骨粗鬆症患者に用いられます。

●脊椎椎体骨折のリスクを66%減少させ、全骨折リスクを61.2%減少させると報告[3]されてます

●使用期間が2年間に制限されており、投与終了後に骨密度が急に低下しないよう、ビスホスホネート製剤やデノスマブなどに切り替えて継続する(逐次療法)ことが推奨されます。

●PTH製剤でも低カルシウム血漿が起こる可能性があるため、定期的に血液検査で確認し、必要に応じてカルシウムを補給します。

価格:月 約15000円(1年間 約180000円)

④抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブ)

●スクレロスチンを抑えることで骨形成促進と骨吸収抑制を同時に実現する、新しいタイプの薬[1]であり、最強の骨粗鬆症薬です。

●商品名イベニティで月1回の皮下注射です。

●脊椎椎体骨折のリスクをビスホス製剤内服より48%減少させ、全骨折リスクをビスホス製剤内服より19%減少させると報告[4]されてます

●一方で、心血管イベント(心臓や血管に関する重篤な病気)が起こるリスクがわずかに増える可能性が指摘されています。心臓病や脳血管疾患などの既往歴がある方は、慎重に医師と相談しましょう。

●投与期間は1年間で、その後ビスホスホネート系などに移行するのが一般的です。

価格:月 約15000円(1年間 約180000円)

6.骨粗鬆症 治療薬 ランキング(骨密度を上げる効果という視点)

1.抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブ)

骨形成と骨吸収抑制を同時に行う“二刀流”。短期間で骨密度を大きく上昇させる可能性が高い。心血管イベントリスクに注意。

2.PTH製剤(テリパラチド)

骨を作る力を高め、椎体骨折予防に優れている。ただし2年の使用制限や低カルシウム血症に注意。

3.抗ランクル製剤(デノスマブ)

半年に1回の注射で、骨吸収を安定的に抑える。低カルシウム血症に注意が必要。

4.ビスホスホネート製剤(注射タイプ)

安定した吸収抑制効果があり、月1回や年1回の点滴も選べる。顎骨壊死というまれな副作用があるが、休薬は一律に推奨されていない。
 
※個々の患者さんの状態や併存疾患、副作用リスク、費用などを総合的に考慮して選択します。

7.注射の適応・効果・終わった後はどうする?

適応

●内服薬で十分な効果が得られない場合

●胃腸障害などで飲み薬が難しい場合

●骨折リスクが高い(すでに骨折歴がある、著しく骨密度が低いなど)場合

効果

●骨密度の改善

●骨折リスクの軽減(脊椎骨折や大腿骨近位部骨折など)

●骨折予防による痛みの軽減や生活の質向上

治療終了後の継続

●イベニティ(ロモソズマブ)やPTH製剤(テリパラチド)は投与期間が限定されているため、終了後にビスホスホネート製剤やデノスマブを使うことで、せっかく上がった骨密度が再び下がるのを防ぎます。

●骨粗鬆症は長期的に付き合う病気なので、定期的な骨密度測定や血液検査を受けながら、医師と治療方針を都度検討していきましょう。

8.Q & A

Q1: 注射は痛い?どのくらいの痛み?

A1: 個人差はありますが、インフルエンザ予防接種程度の皮下注射や筋肉注射の痛みです。ビスホスホネート系は点滴で行う製剤があり、注射針の痛み自体は大きくありませんが、点滴後にインフルエンザ様症状が出る方もいるので注意が必要です。

Q2: 副作用やリスクは何がありますか?

A2: 以下が主な例です。

 

●ビスホスホネート製剤:点滴後のインフルエンザ様症状、まれに顎骨壊死(がっこつえし)のリスクが報告されています。ただし、現在のところ必ずしも“休薬期間”を設ける必要はないとされています。口腔メンテナンスなどを適宜受け、リスクを低減します。

●抗ランクル製剤(デノスマブ):低カルシウム血漿を起こす可能性があり、定期的な血液検査とカルシウム・ビタミンDの補給が重要です。

●PTH製剤(テリパラチド):低カルシウム血漿や悪心、嘔吐などが起こることも。使用期間が2年に制限されており、終了後は骨吸収抑制薬に切り替えることが推奨されます。

●抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブ):心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中など)がわずかに増える可能性が指摘されています。心臓や血管系の病気がある方は事前に医師に相談してください。

Q3: アレルギー反応のリスクは?

A3: どの医薬品にもアレルギー反応のリスクはゼロではありません。骨粗鬆症注射薬で重篤なアレルギーが起こるのはまれですが、注射後に医療機関でしばらく様子を見ることがあるので、指示に従いましょう。

Q4: 注射後に気を付けることは?

A4: 注射部位の腫れや痛みが長引く場合は担当医に相談しましょう。ビスホスホネート系を点滴後は、体調管理のため十分に水分をとると良いと言われています。PTH製剤の自己注射の場合は、毎日同じ時間に打つよう習慣化すると継続しやすいです。あわせて適度な運動や、カルシウム・ビタミンDを意識した食事を取り入れることで治療効果を上げることが期待されます。

9.まとめ

まとめ
骨粗鬆症は、長期間放置すると寝たきりや移動能力が低下するおそれがある病気ですが、近年では以下のように複数の注射薬や治療法が存在します。
 

●ビスホスホネート製剤(注射・点滴)

●抗ランクル製剤(デノスマブ)

●PTH製剤(テリパラチド)

●抗スクレロスチン抗体(ロモソズマブ)

 
骨粗鬆症の程度はもちろん、治療の効果や副作用、注射頻度などを考慮し、医師と相談して自分に合った治療を選ぶことが重要です。とくに重症の骨粗鬆症では、形成促進薬(PTH製剤・イベニティ)から始めて、終了後はビスホスホネート製剤やデノスマブへ移行する継続療法が推奨されるので、投与後のフォローが大切になります。
 
骨粗鬆症が気になる方や既に診断されている方は、定期的な検査と早めの予防、治療を始めましょう。
 
そして、骨密度を上げる方法は、薬物治療だけでなく適度な運動、食事も非常に重要です。運動で正しく筋力をつける方法や骨粗鬆症に良い食事についてはこちらでも解説しています。
 
これからは人生100年時代です。健康な身体と丈夫な骨で明るく楽しい生活を過ごしましょう。

引用文献

  1. 日本骨粗鬆症学会骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会.骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版.日本骨粗鬆症学会.2015年6月
  2. Hasegawa, T., Hayashida, S., Kondo, E., Takeda, Y., Miyamoto, H., Kawaoka, Y., Ueda, N., Iwata, E., Nakahara, H., Kobayashi, M., Soutome, S., Yamada, S., Tojyo, I., Kojima, Y., Umeda, M., Fujita, S., Kurita, H., Shibuya, Y., Kirita, T., Komori, T., & Medicine, J. (2018). Medication-related osteonecrosis of the jaw after tooth extraction in cancer patients: a multicenter retrospective study. Osteoporosis International, 30, 231-239.
  3. Harvey NC, Kanis JA, Odén A, Burge RT, Mitlak BH, Johansson H, McCloskey EV. FRAX and the effect of teriparatide on vertebral and non-vertebral fracture. Osteoporos Int. 2015 Nov;26(11):2677-84.
  4. Lane J, Langdahl B, Stone M, Kurth A, Oates M, Timoshanko J, Wang Z, Libanati C, Cosman F. Romosozumab in patients who experienced an on-study fracture: post hoc analyses of the FRAME and ARCH phase 3 trials. Osteoporos Int. 2024 Jul;35(7):1195-1204.