【ズボラ ストレッチ】膝の痛みを治す イスに座ったままできる簡単なストレッチ
掲載日:2024.12.23
最近、立ち上がるときや階段を上がるとき、なんだか膝がギシギシしてつらくないですか?膝が痛い、膝が動きにくい、と感じると「もう年なのかな…」とため息をついてしまうかもしれません。しかし、そんなあなたに朗報です。特別な器具を使う、ジムに通う、など面倒なトレーニングは必要ありません。たった一つの条件はイスに座ること。いわゆるズボラなストレッチで下半身を簡単に鍛えて、膝を安定化することで膝の痛みを予防して改善することができるのです。
1.膝の痛み
2.ズボラストレッチ
3.座ったまま 筋トレ 効果は?
4.座ったまま ズボラストレッチ
5.まとめ
6.参考文献
1.膝の痛み
膝の痛みはなぜ起こるのでしょうか。年齢を重ねたり運動不足になったりすると、足を支える筋肉が衰え、膝関節への負担が増えます。特に40代・50代あたりから進行する変形性膝関節症は、その後の生活を大きく左右します。初期は階段や正座がちょっとつらい程度でも、放置すれば、膝裏 を完全に伸ばすことさえ難しくなり、だんだんと歩くのが不安定になります。さらに高齢になると、転倒したり膝関節の痛みが原因で日常生活の質が下がって、要支援や要介護が必要になることも少なくありません。厚生労働省の調査では、高齢者が要支援となる原因の第一位に関節疾患が挙げられ、その中でも膝の問題は大きな割合を占めています。当院が所在している明石市と明石医師会が主催している市民健康フォーラムでは、膝の痛みに関する講演のリクエストが最多でした。つまり、膝の痛みは多くの人が抱える課題なのです。
2.ズボラストレッチ
そこで、今のうちに手軽な方法で座ったままの運動や座ったままのストレッチ、さらには座ったままの筋トレを習慣化すれば、将来の膝の痛みや膝が動きにくくなる生活を回避できるかもしれません。今回ご紹介する座ったままエクササイズは、テレビを見ながらでも、デスクワーク中でも、ちょっとした休憩時間でも座ったまま足の運動として実践できます。ズボラストレッチと呼ばれるほど簡単なのに、下半身の筋肉や関節を無理なく鍛え、膝の痛みを軽くして、膝が動くようになって歩行や日常動作を楽にしてくれる可能性があります。特に変形性膝関節症や膝に不安を抱える方、高齢者や運動が苦手な方にもおすすめできます。
3.座ったまま 筋トレ 効果は?
でも、本当に簡単な運動で効果があるの?と思われるかもしれません。ご安心ください。実際に、座ったまま ストレッチや軽い筋力トレーニングが膝関節の痛み改善や機能向上に有効であることが過去の医学的根拠のある研究で示されています。
例えば、大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)を強化する運動は、変形性膝関節症における膝の痛みの軽減や機能改善に効果的であることが報告されています[1]。また、ハムストリング(太ももの裏側)の柔軟性を高めるPNFストレッチは、普通のストレッチよりも柔軟性向上に優れており、膝裏ストレッチをスムーズにして痛みを軽減する可能性があります[2]。さらに、股関節外転筋(お尻の横あたりの筋肉)の強化は膝への負担を減らし、歩行を安定させ、変形性膝関節症による痛みや不安定感の改善が期待できます[3]。これらは科学的根拠に裏づけられ、リハビリや治療法として取り入れられています。
では、実際にどのような ストレッチを行えばよいのでしょうか。ここでは、先述したエビデンスに基づく3つの簡単なエクササイズを紹介します。イスさえあればOKで、特別な道具は不要です。
4.座ったまま ズボラストレッチ
大腿四頭筋
方法
イスに深く腰掛け、背筋を伸ばしましょう。片足を前にまっすぐ伸ばし、つま先を上に向けて5秒間キープ。その後ゆっくり足を戻し、これを10回繰り返します。
効果
太ももの前側(大腿四頭筋)の筋力が強化され、膝関節が安定します。変形性膝関節症や前十字靱帯再建術後の患者でも効果があるとされ[1]、階段を上がるときや立ち上がるときに膝がラクになります。「膝裏ストレッチ 座りながら」行うより先に筋力アップをはかることで、安全かつ効果的なケアが可能です。
膝裏ストレッチ(ハムストリングPNFストレッチ)
方法
イスに座ったまま、片足を前に伸ばし、つま先を自分の方に向けて太ももの裏側(ハムストリング)が軽く伸びる姿勢をとります。膝上あたりを手で軽く押さえ、膝を曲げる方向に力を入れて5秒キープします(実際に動かす必要はありません)。一度力を抜いて息を吸い、吐きながら少し上体を前傾させてハムストリングをさらに伸ばします。再び膝を曲げる方向に力を入れて5秒キープ→力を抜いて前傾を少し深める、を数回繰り返します。
効果
ハムストリングPNFストレッチは、筋肉を収縮してから緩めることで、普通のストレッチより柔軟性向上効果が高いことが知られています[2]。ハムストリングが柔らかくなると膝の痛みを治すストレッチとしても役立ち、痛みが和らぎ、歩きやすくなります。膝裏を伸ばすと痛い ストレッチを避けていた方でも、少しずつ柔軟性を高められます。
股関節外転筋エクササイズ
方法
イスに座り、両足を肩幅よりやや広めに開きます。膝を外側に開くように力を入れ、5秒キープ。ゆっくり力を抜き、これを8回ほど繰り返します。
効果
股関節の外転筋が強化されると、歩行時の安定性が増し、膝関節への負担が軽減されます[3]。結果的に変形性膝関節症による痛みや不安定感が和らぎ、日常生活が快適になります。下半身のバランス改善にもつながり、階段の上り下りが楽になることも期待できます。
これらの座ったままエクササイズは、いずれも大きな負担なく無理なく続けられるズボラなストレッチです。誰でもどこでもいつでも、椅子さえあれば、仕事の休憩中、デスクワークの合間、テレビを見ながら、などいつでも気軽に始められます。
さらに毎日運動する必要もありません。なんと週に3回、3ヶ月続けると効果があると報告[3]されているズボラなストレッチです。もちろん、痛みがあれば無理せず中止してください。エクササイズできない日があっても、続けていくことで下半身の筋肉が少しずつ強くなり、膝への負担が減り、将来の不安が軽くなります。何事も継続することが大事ですね。
5.まとめ
さあ、あなたも今日からイスに座って気軽に座ったままのストレッチを始めてみませんか。これらのズボラなストレッチはトレーニング器具も広い場所も必要ありません。日常生活の中で少しずつ下半身を強くし、「膝が痛くて…」と嘆く日々にさよならしましょう。
軟骨を守って痛みのない膝で、明るく楽しい健康な生活を過ごすために、今日から第一歩を踏み出してみてください。
6.参考文献
- Imoto AM, et al. Quadriceps strengthening exercises are effective in improving pain, function and quality of life in patients with osteoarthritis of the knee. Acta Ortop Bras. 2012;20(3):174-9.
- Anjum N, et al. Comparison of instrument-assisted soft tissue mobilization and proprioceptive neuromuscular stretching on hamstring flexibility in patients with knee osteoarthritis. PeerJ. 2023 Dec 1;11:e16506. doi: 10.7717/peerj.16506.
- Thomas DT, et al. Hip abductor strengthening in patients diagnosed with knee osteoarthritis – a systematic review and meta-analysis. BMC Musculoskelet Disord. 2022 Jun 29;23(1):622.