中山クリニック

ばね指の原因と治療法を徹底解説!自然治癒は可能?エコーガイド下 腱鞘切開で痛みを根本解決!

掲載日:2024.09.20

今回は「ばね指」というテーマでお話しします。突然ですが、みなさんは指が曲がりにくくなったり、伸ばしにくくなったりした経験はありませんか?そんな症状、実は「ばね指」かもしれません。今日はこの「ばね指」について、わかりやすく説明していきます。

————目次————
1.ばね指って何?
2.ばね指の症状は?
3.なぜばね指になるの?
4.ばね指はどうやって診断するの?
5.ばね指の治療法は?
6.ばね指の予防法は?
7.よくある質問
8.最後に
9.参考文献

ばね指って何?

「ばね指」は医学用語で「弾発指」や「屈筋腱腱鞘炎」と呼ばれる手の病気です。その名前の通り、指がばねのように「カチッ」と動かなくなったり、引っかかったりする症状が特徴です。でも、なぜ「ばね指」と呼ぶのでしょうか?それは、症状がまるでばねの動きに似ているからです。指を曲げようとするとカクっと途中で引っかかり、そこから急に曲がる。逆に、曲げた指を伸ばそうとすると、やはり途中でカクっと引っかかって、急に伸びる。この動きが、ばねを押したり離したりする時の動きによく似ているのですね。

ばね指の症状は?

 
ばね指の主な症状は次の通りです
 

  1. 指を曲げる時に引っかかりを感じる
  2. 指を伸ばす時に痛みを伴う「カクッ」という感覚がある
  3. 指の付け根あたりが腫れたり、痛んだりする
  4. 朝起きた時に指が曲がったままになっていることがある
  5. 指を動かすと「ポキポキ」と音がする

 
これらの症状は、朝起きた時や長時間同じ姿勢で過ごした後に特に強く現れることがあります。

なぜばね指になるの?


人間の指には「腱(けん)」という、筋肉と骨をつなぐひも状の組織があります。この腱が、「腱鞘(けんしょう)」という筒の中を通っています。指を曲げたり伸ばしたりする時、この腱が腱鞘の中をスムーズに滑ることで、指が滑らかに動きます。ばね指は、この腱や腱鞘に何らかの問題が起きて指が滑らかに動かなくなります。主な原因は以下の通りです。
 

  1. 使いすぎ:同じ動作を繰り返したり、強い力で物を握ったりすることで、腱鞘に負担がかかり、腱鞘が分厚くなって腱が滑らかに動かなくなります。
  2. 炎症:腱や腱鞘に炎症が起こると、腫れてスムーズに動かなくなります。
  3. 加齢:年を取ると、腱や腱鞘が硬くなり、弾力性が失われたりします。
  4. 病気:糖尿病や高血圧、リウマチなどの病気がある人は、ばね指になりやすいことがわかっています(1)
  5. 職業:キーボードをたくさん使う仕事や、力仕事など、手や指を酷使する職業の人はリスクが高くなります。

 
これらが原因で、ばね指の不快な症状が現れます。

ばね指はどうやって診断するの?

 
ばね指の診断は、主に以下の方法で行われます。
 

  1. 問診:医師が症状や生活習慣について詳しく聞きます。
  2. 触診:指を触って、腫れや痛みがないか確認します。
  3. 動作確認:実際に指を動かしてもらい、引っかかりや痛みがないか確認します。
  4. 超音波検査:超音波(運動器エコー)を使って指の中の様子を観察できます。エコーで見ながら指を動かすと、腱や腱鞘の動きや状態を詳しく調べることができます。
  5. レントゲン検査:骨の棘や変形がないか、関節軟骨の隙間を確認します。

 
これらの検査でばね指かどうかを判断できます。

ばね指の治療法は?

ばね指の治療法は、症状の程度や原因によって異なります。主な治療法は以下の通りです

1. 保存治療

まずは、以下の方法で治療します。
 

  • ・安静:指を休ませることで、炎症を抑えます。
  • ・装具療法:指を固定するサポーター使って、指を使わないようにして休ませます。
  • ・ストレッチ:指のストレッチを行い、関節を動かして柔軟性を保ちます。
  • ・冷却・温熱療法:氷や温かいタオルで患部を温めたり冷やしたりして、痛みや炎症を和らげます。
  • ・薬物療法:炎症を抑えるために、飲み薬の内服や塗り薬を使うことがあります。
  • ・ステロイド注射:症状が強い場合、炎症を抑えるためにステロイド注射を行うことがあります。腱や腱鞘が断裂することがあるので何度も注射を繰り返すことは避けましょう。
  • ・リハビリ:指の関節が拘縮している場合は可動域訓練が必要になります。特に手術の後に必要になることがあります。

 
※ 実際の診療では、指を安静にすることやサポーターを装着することは、日常生活がとても不便になるので、ほとんど出来ないです。

2. 手術療法


保存治療で治らない場合や、痛みが強くて日常生活も支障がある、指が動かなくなる、関節が拘縮している、など重症例は手術を検討します。
 

  • ・腱鞘切開術:最も一般的な手術方法です。皮膚を切って腱鞘の一部を切開して、腱の動きをスムーズにします。
  • ・経皮的腱鞘切開術:皮膚を大きく切らずに、エコーを見ながら針のような器具で腱鞘を切開する方法です。傷が1-2mmほどで翌日から入浴出来て水仕事も可能です。傷跡はほぼ残らず、回復が早いのが特徴です(2)。当院でも母指以外に導入しています。

 
※ 手術は基本的に局所麻酔で日帰りになります。再発率も少なく術後成績も良好です。

ばね指の予防法は?

 
ばね指を予防するためには、以下のような方法があります
 

  1. 適度な休憩:同じ動作を長時間続けないよう、こまめに休憩を取りましょう。
  2. ストレッチ:仕事の合間や寝る前に、指のストレッチをしましょう。
  3. 正しい姿勢:スマホやキーボードを打つ時、物を持つ時など、正しい姿勢を心がけましょう。
  4. 適切な道具:作業に適した使いやすい道具を使い、無理な力がかからないようにしましょう。
  5. 定期的なチェック:手や指に違和感を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。

よくある質問

Q1: ばね指は自然に治りますか?

A1: 軽度の場合、安静にすることで自然に治ることもありますが、多くの場合は適切な治療が必要です。妊娠中や妊娠後に発症したばね指は治ることが多いです。

Q2: ばね指の手術は痛いですか?

A2: 局所麻酔を使うので、手術中の痛みはほとんどありません。手術後も、ほとんどの方は軽度の痛みで済みます。

Q3: ばね指は再発しますか?

A3: 適切な治療と予防を行えば、再発のリスクは低くなります。ただし、原因となる行動を続けると再発する可能性があります。

Q4: 子供もばね指になりますか?

A4: はい、病態が異なりますが子供もばね指になることがあります。特に親指に多く見られます。

Q5: ばね指は感染しますか?

A5: ばね指自体は感染症ではありません。

最後に


ばね指は、早めに適切な治療を受ければ、多くの場合、良好な結果が得られます。しかし、放置すると症状が悪くなって重症化し、指の関節が固くなって動きにくくなり、日常生活に支障をきたすことがあります。指に違和感や痛みを感じたら、我慢せずにお近くの整形外科への受診をおすすめします。また、日頃から指の健康に気を配り、指を使い過ぎないようにしてストレッチを心がけることで、ばね指の予防にもつながります。健康な手指は、私たちの日常生活に欠かせません。この機会に、自分の手や指の健康について考えてみてはいかがでしょうか。
 
中山クリニックでは、ばね指を含む手や指の痛みやしびれ、動きにくい、腫れなどの問題に対して、丁寧な診察と適切な治療を行っています。お困りの方は、お気軽にご相談ください。
 

参考文献

  1. Vega-Morales D, Esquivel-Valerio JA, Negrete-López R, Galarza-Delgado DA. Risk factors associated with trigger finger. Case-control study. Cir Cir. 2008;76(4):323-327.
  2. White JW, Cendales LC, Gelberman RH, Moran SL. Assessment of short-term response and review of technique of ultrasound-guided percutaneous A1 pulley release for the treatment of trigger finger. J Ultrasound Med. 2021;40(7):1395-1402. doi:10.1002/jum.15525