中山クリニック

足関節の疾患

外反母趾 三角骨障害 足底筋膜炎(足底腱膜炎)
足関節捻挫(外側靭帯損傷) 距骨骨軟骨損傷 扁平足障害

外反母趾

外反母趾の一番の原因は靴を履くことで、幅の狭いつま先が細くなった靴を履くと母指のつけ根から先が圧迫されて変形します。10歳代に起こるものは母指が人差し指より長かったり、生まれつき 偏平足ぎみであったりする外反母趾になりやすい特徴があります。最も多い中年期のものは履物に加えて、肥満と筋力低下などによっておこります。

症状

特徴的な症状は足の母指(親指・母趾)の先が人差し指(第2趾)のほうに「くの字」に曲がり、つけ根の関節の内側の突き出したところが痛みます。その突出部が靴に当たって炎症を起こして、ひどくなる と靴を履いていなくても痛むようになります。

保存療法紹介

患部を除圧するパッド、歩行時や夜間に使用する矯正用装具、アーチを補強するインソールを使用する方法があります。湿布、軟膏、クリームといった消炎鎮痛剤入り外用薬などを併用することによって痛みを軽減させることができます。 外反母趾に効果が望めるストレッチ・トレーニングもあります。足指や足裏の筋肉が固まらないようにストレッチをしてほぐすことが大切です。

外反母趾の手術は、張り出したバニオンの切除、固くなった筋肉や腱の調整、そして親指の中足骨を切って角度を矯正する骨切り術を組み合わせて行うのが一般的です。骨切り術の方法は種類が多いため、進行度や年齢によって適切なものを選択します。


外反母趾①

外反母趾① 術後

外反母趾②

外反母趾② 術後

三角骨障害

三角骨とは、足関節の距骨の後ろにある過剰骨です。過剰骨とは、文字通り本来ない過剰にある骨です。多くの場合片足だけに見られます。珍しいような感じがしますが、三角骨は健常者の約10%にあるとされています。三角骨障害は2つの条件が重なったときに生じます。1つ目の条件は足関節後方に三角骨があること。2つ目の条件は部活動などで熱心にスポーツをしていることです。とくに、若いバレエダンサーやサッカー選手に多く見られます。クラシックバレエのポアント(つま先立ち姿勢)やサッカーのインステップキック(足首を伸ばして甲でボールを蹴る)で、足の甲を強く伸ばす姿勢を何度も取るためです。

症状

主に、つま先立ちの姿勢や足の甲を伸ばすと足首の後ろ(アキレス腱周囲)に強い痛みが出ます。特に以下のような動作は、三角骨障害で現れやすい症状です。

  • 普段は痛くない。足を伸ばす動作だけが痛い。
  • 片足で踵上げをすると痛みがある。
  • サッカーのインステップキックが痛い。
  • 空手の蹴り動作をするのが痛い。
  • 体操や新体操で、綺麗に足を伸ばそうとする動作が痛い。
  • 水泳のバタ足動作が痛い。

保存療法紹介

炎症がある場合は、非ステロイド性消炎鎮痛剤等で炎症を抑ます。状況に応じてステロイド注射を行なうこともあります。 これらは 一時的に症状を改善させるだけなので並行してリハビリテーション下で足関節の可動域拡大や周囲筋強化を目的に機能訓練を行なっていきます。当院のステロイド注射では、出来る限り少量で、ピンポイントで効果が出る様に、超音波ガイド下にて1mm単位に調整して注射を行います。

手術療法紹介

関節鏡視下手術という患者様へのダメージが少ない低侵襲手術を行います。アキレス腱の両側2ヶ所 5mmほど切開して、一方から入れた内視鏡で内部を見ながら、もう一方から器具を入れて三角骨を取り除きます。術後は2、3日で退院できます。入院中に足関節の可動域訓練や周囲筋強化訓練などのリハビリをきちんと行えば、退院後にスポーツに復帰できます。

足底筋膜炎(足底腱膜炎)

長時間の立位や歩行、ランニングなど、足底に負担の加わる動作を過剰に繰り返すことにより足底腱膜に炎症が生じ、踵の内側前方から中央にかけて痛みが生じます。この症状が足底腱膜炎であり、特徴的な傾向として、「起床時の歩き出し時に足の裏に痛みが生じる」「しばらく歩いていると痛みがなくなる」などがあげられます。

症状

  • 歩くと踵から足底が痛い
  • 歩行時間や距離が長いと痛みが増強する
  • 足の裏を圧迫すると痛い
  • 運動後や運動翌日が痛い
  • 階段やつま先立ちなどをすると痛い

保存療法紹介

ステロイド注射のような即効性はありませんが、中・長期的に見るとリハビリによる治療が最も効果が高いです。 痛みが起きたきっかけが無い方は、足底腱膜への負担が原因の一つなので、負担がかからない様にリハビリを行います。特に、下肢後面の硬さ(柔軟性低下)や、足指の機能不全、偏平足などの足部の形態異常などを評価し、その人に合ったアプローチを行います。また、電気療法や超音波治療などの物理療法も組み合わせながら実施します。体外衝撃波により痛みを感じとる神経を変性させたり、新生血管の再生を促すことで慢性的な痛みを軽減する治療方法もあります。

手術療法紹介

従来の足底腱膜切離術は、痛みがすみやかに軽減するすぐれた術式ですが、足底腱膜を切るということに疑問を抱く専門家がいることは事実です。今までのところ足底腱膜を切ることによる大きな合併症は見られていませんが、足底腱膜切離術自体、歴史の浅い術式のため、長期成績は依然として不明です。現在のところ、体外衝撃波による痛みの軽減具合は足底腱膜切離術と同等の結果が得られており、難治性足底腱膜炎に対しても適応のある「体外衝撃波治療」を当院では推奨しています。

体外衝撃波についてはこちら

足関節捻挫(外側靭帯損傷)

日常生活やスポーツの外傷で一番多いのが、足首を内側にひねって怪我をする足関節捻挫です。膝などの外傷に比べると、日常生活への支障が軽度の事が多いので、つい軽くみられがちですが、不適切な治療や、放置をすると後で痛みが残ったり、不安定な足首となり、治療に難渋することがあります。

症状

  • 足関節(足首)捻挫のほとんどは、足関節を内側に捻って生じます。
  • 足関節外側の靭帯(前距腓靱帯)が損傷します。
  • 外くるぶし(外果)の前や下に痛みがあり、腫れます。
  • また、外くるぶしの前や下を押さえると、痛みます。

保存療法紹介

完全に靭帯が断裂している場合はある程度の安静が必要となります。当院ではギプスシーネによる固定を症状に応じて1~3週間ほど行います。ギプスシーネによる固定は取り外しができるので入浴が可能ですし、足関節を適度に制限しながら動かすことができるため、足がむくんだり足関節が硬くなりすぎてしまったりするのをある程度防ぐことができます。 また、リハビリテーション下で筋力トレーニングや硬くなったところをほぐし動きを改善するようなアプローチします。

手術療法紹介

直視下に切れた靱帯を縫合します。当院では内視鏡を用いて手術を行っており、約5mmの傷が3カ所と非常に侵襲が少なく、解剖学的な位置に再建します。術後は2〜3週間のギプス固定を行い、リハビリテーションによる足関節の機能訓練を行います。スポーツ復帰は術後3ヶ月を目標にします。

距骨骨軟骨損傷

足関節の土台にある距骨という骨の軟骨に亀裂が入ったり、はがれた状態です。症状は漠然とした足首の痛みや、関節のなかで何かががずれる感じがします。捻挫のあとに発生することがありますが、原因を特定できないこともあります。捻挫したあとになかなか痛みが取れない場合の原因のひとつです。

症状

足関節を捻挫したときに発生することが多く、捻挫後も長期にわたって痛みが続きます。
足関節の疼痛・腫脹、可動域制限されます。

保存療法紹介

局所の安静、装具療法、ヒアルロン酸の関節内注射などの保存治療を行います。また、再発予防のために足関節周囲の筋肉トレーニングやストレッチなどの運動療法、リハビリを行っていくことが必要不可欠となります。

手術療法紹介

【骨髄刺激法】

損傷軟骨部の下の骨髄を穿孔・刺激を加えることによって繊維軟骨の再生を促します。

【骨軟骨片固定術】

剥がれた骨軟骨片が大きく、比較的状態が良ければ、その軟骨片を再度固定し直します。

【自家骨軟骨柱移植術】

膝関節、もしくは距骨の非荷重部から骨軟骨柱を採取して損傷部に移植します。

扁平足障害

足部のアーチが低下した状態をいい、縦アーチが低下した足を縦軸扁平足、横アーチが低下した足を横軸扁平足といいます。通常、扁平足というと縦軸扁平足のことを指す場合が多く、後足部は外反しており外反扁平足の形態を示します。腓骨筋腱の過緊張によってもたらされる扁平足もあり、腓骨筋腱痙直型扁平足と呼ばれます。横軸扁平足は中足骨の配列の異常による横アーチの低下で、開帳足、外反母趾などに合併することが多くあります。

症状

幼児のころから足が平べったく、大人になってもそのまま残っているタイプの扁平足では痛みはあまりありません。これに対して中年以降に発症する扁平足では、内側のくるぶしの下が腫れて痛みが生じます。初めは足の扁平化は目立ちませんが、しだいに変形が進み、つま先立ちがしにくくなり、さらに足の柔軟性が低下して歩行が障害されます。

保存療法紹介

幼児期扁平足の大多数は治療の必要がなく、成長と共に自然と改善していきます。一方、成人の場合は痛みなどの症状を伴うため、足のアーチ機能を補助する足底板などの装具を装着することもあります。足のアーチを鍛えるためのリハビリや減量指導も並行して行います。

手術療法紹介

【腱移行術+踵骨骨切り術】

腱移行術は擦り切れてしまった後脛骨筋腱を、別の腱を使って再建する手術です。長母趾屈筋腱という腱を舟状骨という足の甲の内側にある骨に縫い付けて、後脛骨筋の代用にします。踵骨骨切り術は外側にかたむいてしまった踵の骨を内側に矯正してスクリューで固定する手術です。通常これら二つの手術を同時に行います。これらの手術はおもに軽度の変形の患者さんに行います。

【外側支柱延長術】

後脛骨筋腱が切れて扁平足になってから時間が経過すると、足先が徐々に外側を向いてくるようになります。この場合は、腱移行術+踵骨骨切り術に加えて、外側支柱延長を追加することがあります。これは踵の骨を、外くるぶしの前のあたりで少し長くして外に向いてしまったつま先が真っすぐ前に向くようにするものです。

【三関節固定術】

変形した形のまま固まってしまい、矯正できない場合には、一つ一つの骨を組み立てなおしてアーチをつくり、その位置で固定します。具体的には距骨下関節、距舟関節、踵立方関節という三つの関節を固定しますので、三関節固定術といいます。