「朝の一歩目が痛い」「かかとの痛みが半年以上治らない」――そんな難治性の足底腱膜炎に対して、体外衝撃波治療(ESWT)は傷をつけずに痛みをやわらげる治療法です。
6か月以上の保存療法で改善しない場合は保険適用となり、週1回×3回程度の外来通院で受けられます。複数の臨床試験で、偽治療やステロイド注射と比べて中期的な改善が報告されています。
足底腱膜炎(足底筋膜炎)とは?かかとの痛みが治らない原因
足底腱膜炎(そくていけんまくえん/足底筋膜炎)は、かかとの痛みの原因としてもっとも多い疾患です。足の裏には、かかとの骨から足指の付け根まで張る「足底腱膜」という丈夫な膜があり、歩くたびにバネのように衝撃を吸収しています。この腱膜の付着部に小さな傷や炎症・変性が繰り返し起こることで、痛みが生じます。
典型的な症状は、「朝起きて最初の一歩が強く痛む」「立ち上がりや歩き始めにかかとが痛い」といったものです。長く続くと歩行やスポーツが大きく制限され、日常生活にも支障が出てきます。
多くはストレッチ・インソール・体重管理などの保存療法で改善しますが、6か月以上続く慢性・難治性のケースもあり、こうした場合に体外衝撃波治療(ESWT)が選択肢になります。
体外衝撃波治療(ESWT)とは?
体外衝撃波治療(ESWT:Extracorporeal Shock Wave Therapy)は、体の外から患部に「衝撃波」と呼ばれる圧力波を当てる治療法です。もともとは腎結石を砕くために使われていた技術が、整形外科領域の慢性的な痛みの治療に応用されました。
皮膚を切らず、麻酔も不要で、外来通院で受けられるのが特長です。衝撃波には、痛みを伝える神経終末への作用による除痛効果と、血流改善や組織修復をうながす修復効果の2つがあると考えられています。
集束型(FSW)と拡散型(RPW)の違い
| 種類 | 特徴 | 保険 |
|---|---|---|
| 集束型(FSW) | エネルギーを一点に集めて深部にも届く。難治性足底腱膜炎の治療に用いられる。 | 難治性足底腱膜炎で保険適用 |
| 拡散型(RPW) | 出力が低く、浅い範囲に広く作用。リハビリの物理療法として使われる。 | 自由診療 |
ESWTは保険適用される?費用はいくら?
日本では、難治性足底腱膜炎に対する集束型ESWTは保険適用されています。具体的には、以下の条件を満たす方が対象です。
- 足底腱膜炎と診断されている
- 6か月以上、ストレッチ・インソール・投薬などの保存療法を行っても痛みが改善しない
足底腱膜炎以外の疾患(テニス肘、アキレス腱炎、肩の石灰沈着性腱板炎など)や、拡散型による治療は、現時点では保険適用外(自由診療)となります(対象疾患はこちらで詳しく解説します)。
費用の目安
| 対象疾患 | 金額 |
|---|---|
| 足底筋膜炎 (保険適応) | 負担 3 割 15,000 円 1 割 5,000 円 |
| その他 (テニス肘など) | 1 回目 15,000 円 2 回目以降 5,000 円 |
体外衝撃波治療(ESWT)の効果|PubMed論文でわかっていること
ESWTの有効性は、国内外の多くの臨床試験で検証されています。ここでは、PubMedに収録された質の高い研究(ランダム化比較試験・メタアナリシス)をもとに、患者さん目線でわかりやすく整理します。
① 偽治療(プラセボ)との比較
慢性足底腱膜炎の患者さんを対象とした複数の多施設ランダム化比較試験では、ESWTを受けた方は治療後12週の時点で痛みのスコアが約70%改善したのに対し、偽治療(プラセボ)群の改善は約35〜45%にとどまりました1,2。治療の成功率もESWT群が有意に高く、「実生活に役立つレベルの改善」が得られています2。
② ステロイド注射との比較
16件のランダム化比較試験(合計1,121名)をまとめた2024年のメタアナリシスでは、3〜6か月という中期の経過で、ESWTはステロイド注射と比べて次の点で優れていると報告されています3。
- 痛みの軽減が大きい
- 足底腱膜の厚みがより減少する
- 足の機能スコアがより改善する
一方で、個々の試験では「短期では両者に明らかな差はない」とするものもあり4、総合すると「長く続く痛みに対して、中期的な改善が期待できる治療」と評価されています。
③ 他の物理療法との比較
超音波治療や高出力レーザー治療など、他の物理療法と比較した研究では、痛みの改善はおおむね同程度で、治療法ごとに得意とするポイント(機能改善、固有感覚の回復など)が少しずつ異なることがわかっています6,7。そのため、症状や生活スタイルに合わせて、ESWTと他のリハビリ治療を組み合わせることが推奨されます。
④ 画像(エコー)で見た変化
超音波検査で足底腱膜の厚みを測定した14件のRCT(867名)のメタアナリシスでは、ESWTを受けた患者さんの足底腱膜は有意に薄くなる(炎症・変性が改善する)ことが示されています5。「痛みだけでなく、組織の状態そのものが良くなっている可能性がある」という点はESWTの特徴のひとつです。ただし、同研究では他の非手術治療と比べた痛みの改善には明確な差が出ておらず、効果には個人差がある点に留意が必要です5。
体外衝撃波治療の副作用・安全性
複数のランダム化比較試験およびメタアナリシスで報告されているESWTの副作用は、主に次のものです1,3。
- 治療中・治療後の一時的な痛み
- 照射部位の軽い赤み(発赤)
神経障害や骨折などの重篤な合併症は非常にまれとされ、長期のフォローでも重い有害事象の増加は報告されていません。麻酔や切開を伴わないため、体への負担が少ない治療法と考えられています。
当院では2015年に体外衝撃波治療を導入して以来、これまでに重大な副作用は経験しておらず、安全性の高い治療として多くの患者さんに行ってきました。
治療回数と対象になる方
研究で多く用いられているプロトコルは、週1回程度・合計3回前後で、痛みの強い部位をエコーで確認しながら照射するというものです1,2。慢性例では複数回照射するほうが改善が長く続く傾向があります(至適な回数や出力には議論もあります8)。
ESWTが特に向いているのは、次のような方です。
- 6か月以上、かかとの痛みが続いている慢性・難治性の足底腱膜炎
- ストレッチ・インソール・投薬などの保存療法で十分な改善が得られない方
- スポーツや立ち仕事で長時間立つ必要があり、長期的な機能改善を重視したい方
中山クリニックでの足底腱膜炎ESWT治療成績
中山クリニックでは、難治性足底腱膜炎に対する体外衝撃波治療を行っており、当院の実績として以下のような結果が得られています。
| 指標 | 当院での実績 |
|---|---|
| スポーツ復帰率 | 96% |
| VAS(痛みのスコア) | 平均 49 → 24(改善率 約51%) |
論文で示されている結果と同様に、「スポーツや仕事への復帰」「歩行時痛の軽減」に関して良好な結果が確認されています。
足底腱膜炎以外の疾患への体外衝撃波治療(自由診療)
体外衝撃波治療は、足底腱膜炎以外にも、欧米を中心にさまざまな慢性の痛みや骨・腱の障害に応用されており、国際衝撃波治療学会(ISMST)でも複数の疾患が適応として挙げられています。日本国内で保険適用となるのは難治性足底腱膜炎のみで、それ以外は自由診療(保険適用外・全額自己負担)となります。当院では2015年の導入以来、これらの疾患にも対応しています。
| 分類 | 主な対象(自由診療) |
|---|---|
| 腱・付着部の障害 | 上腕骨外側上顆炎(テニス肘)/上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)/石灰沈着性腱板炎(肩)/アキレス腱炎 など |
| 骨の障害(骨癒合の促進) | 疲労骨折/腰椎分離症/難治性骨折(骨折の遷延治癒・偽関節) など |
| その他 | 難治性の皮膚潰瘍 など |
これらの疾患では、衝撃波による血流改善・組織修復作用や、骨の治癒を促す作用が期待されます。ただし、疾患ごとにエビデンスの蓄積には差があり、効果には個人差があります。適応の可否や治療方針は、診察のうえで判断します。
自宅でできるセルフケア(足底腱膜炎)
ESWTを検討する前後を問わず、足底腱膜炎ではセルフケアの継続が基本になります。次のようなケアが代表的です。
- 足底のストレッチ:足指を手前にそらして足裏の腱膜を伸ばす(朝の一歩目の前に行うのが効果的)
- ふくらはぎのストレッチ:アキレス腱・ふくらはぎを伸ばし、足底への負担を減らす
- インソール・クッション:かかとへの衝撃をやわらげる
- 体重管理:足裏にかかる負担を軽くする
よくある質問(FAQ)
足底腱膜炎の体外衝撃波治療(ESWT)は保険適用されますか?
体外衝撃波治療は痛いですか?副作用はありますか?
ESWTは何回くらい治療が必要ですか?
ESWTとステロイド注射ではどちらが良いですか?
ESWTが向いているのはどんな人ですか?
足底腱膜炎はセルフケアで治りますか?
足底腱膜炎以外にも体外衝撃波治療は受けられますか?
まとめ
- 足底腱膜炎は、かかとの痛みでもっとも多い疾患。多くは保存療法で改善するが、6か月以上続く難治性のケースもある。
- 体外衝撃波治療(ESWT)は、傷をつけず麻酔も不要で外来通院で受けられる治療。
- 難治性足底腱膜炎に対しては保険適用(週1回×3回程度)。
- 偽治療やステロイド注射との比較で、中期的な改善が複数の研究で報告されている。副作用は軽微なものが中心。
かかとの痛みが半年以上治らない方へ
「何をしてもかかとの痛みが取れない」という方は、一度ご相談ください。診察のうえ、ESWTの適応を含めて最適な治療をご提案します。
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本記事は一般的な医療情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状には個人差があり、治療効果を保証するものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関を受診してください。
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