中山クリニック

膝関節の疾患

前十字靭帯損傷(ACL損傷) 内側側副靭帯損傷(MCL損傷) 後十字靭帯損傷(PCL損傷)
変形性膝関節症 半月板損傷 滑膜ひだ障害

膝は、大腿骨(太ももの骨)、脛骨(すねの骨)、および膝蓋骨(ひざのお皿)の3つの骨で構成されています。これらの骨は、ひざの中にある2つの前十字靭帯と後十字靭帯、ひざの外にある2つの側副靭帯と膝蓋靭帯、膝窩靭帯、内と外の2つの半月板、関節軟骨などによって支えられ、安定した動きを可能にしています。靱帯は骨と骨をつないで安定性をもたらし、軟骨は骨同士の摩擦を減らしてクッションの役割を担い、スムーズな動きをサポートしています。

前十字靭帯損傷(ACL損傷)

スポーツ外傷として頻度が高く、ジャンプ後の着地、疾走中の急激な方向転換・ストップ動作、相手との衝突などによって、膝関節に異常な回旋力が加わって損傷します。受傷時には『ブツッ』という断裂音を感じたり、膝が外れた感じがしたり、激しい痛みを伴ったり、徐々に膝が腫れて曲りが悪くなったりします。

症状

急性期(受傷後3 週間くらい)には膝の痛みと可動域制限がみられます。しばらくして腫れ(関節内血腫)が目立ってくることもあります。急性期を過ぎると痛み、腫れ、可動域制限はいずれも軽快してきます。しかしこの頃になると損傷部位によっては膝の不安定感が徐々に目立ってくることがあります。これは下り坂やひねり動作の際にはっきりすることが多いです。不安定感があるままに放置しておくと新たに半月板損傷や軟骨損傷などを生じ、慢性的な痛みや腫れ(水腫)が出現します。

保存療法紹介

膝動揺性抑制装具(サポーター)を装着して早期から痛みの無い範囲で可動域訓練を行い、筋力低下を最小限にとどめるようにします。受傷初期は疼痛緩和と安静を兼ねてギプス固定を行うこともあります。内側側副靭帯損傷では多くの場合、 保存的に治癒しますが、前十字靭帯損傷ではその可能性はかなり低くなり手術を選択することが多くなります。後十字靭帯単独損傷の場合には多少の緩みが残ってもスポーツ活動に支障をきたさないことが多いことから、先ずは保存療法を試みるようにします。

手術療法紹介

関節鏡視下再建術は、最小限の切開で大きな合併症もなく、術後の成績も安定しているため、有効な治療方法として確立されています。膝関節を構成する大腿骨と脛骨の最適部位に関節鏡を用いて細いトンネルを作製し、そこに採取加工した腱を貫いて上端と下端を金具で固定することで膝の安定性を得ることを目的とします。

内側側副靭帯損傷(MCL損傷)

膝の外側に大きな打撃を受けた時、膝の内側は自然と開き、内側側副靭帯は伸びるか切れてしまいます。特にアメフト、ラグビー、アイスホッケーなどのように他の選手と勢いよくぶつかり合うようなスポーツでは、その力が膝に加わることで痛めることが多いです。また、接触がない場合でも、膝が内側に入るといったことや、極度に捻ることでも損傷することがあります。

症状

痛み

膝の内側に痛みがでます。内側側副靭帯は大きな靱帯なので、他靭帯のケガと比べても痛みが強い場合が多いです。

腫れ

膝の内側部分に腫れが見られます(受傷後、すぐに腫れない場合もあります)。時間が経つにつれて膝の他の部位にも腫れがうつることがあります。

可動域の低下

膝が固くなった感じがします。膝を真っすぐに伸ばす、あるいは曲げることが難しくなります。

歩行困難

可動域が制限され膝の曲げ伸ばしが難しいため、階段を上る・椅子に座ることが困難になります。

保存療法紹介

保存療法として、膝の腫れや痛みの症状が強い場合は、ギプスシーネ固定を行います。また、日常生活での膝の安静を基本とし、痛みなどの炎症を抑えるために湿布や内服薬にて経過をみます。膝に水(関節液)や血液が溜まっている場合は吸引し、局所麻酔剤やステロイドを注射し症状を軽減させます。 早期から痛みの無い範囲で可動域訓練を行い、筋力低下を最小限にとどめるようにします。

手術療法紹介

完全損傷で不安定性が残っている場合には内側側副靭帯の縫合術を行います。靱帯の損傷状態や時期によっては、人工靭帯を用いた補強術や自分の件を用いた再建術を行います。治癒期間の短縮や保存療法で十分な安定を得ることができなかった時にPRP(多血小板血漿)療法を選択することもあります。PRP療法は、再生医療に分類され、患者様ご自身の血液から血小板を分離し、患部へ注射を行うことで治癒力を高める方法です。

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後十字靭帯損傷(PCL損傷)


後十字靭帯損傷例

正常例

後十字靭帯は膝関節内に存在し、膝が後方へ亜脱臼しないようにしている靭帯です。前十字靭帯に比べて太さと強度があり、脛骨(けいこつ)が後方へずれないよう安定をさせる役割があります。膝を強くひねったり、急に膝をついた時、交通事故で膝を打った時などが原因で損傷(断裂)してしまう場合があります。損傷(断裂)してしまうと、日常生活には特に支障をきたすことはあまりないですが、階段を下りる時やスポーツで着地した時に膝が崩れるような感覚が起こります。

症状

  • 階段の下り、スポーツ活動中に膝の不安定感が起こる
  • 歩行時、特に踵をついたときに不安な感じがする
  • 膝の腫れ、痛み

保存療法紹介

急性期は患部の安静を図るため、固定及び免荷をし、関節内に出血があれば穿刺を行う場合があります。関節内の腫脹、疼痛が軽減してきたら、リハビリテーションで大腿四頭筋の強化と膝 関節可動域訓練を行います。疼痛が落ち着き、可動域が回復してから徐々にスポーツを再開していきます。

手術療法紹介

完全損傷で不安定性が残っている場合には後縦靭帯の縫合術を行います。靱帯の損傷状態や時期によっては、人工靭帯を用いた補強術や自分の件を用いた再建術を行います。治癒期間の短縮や保存療法で十分な安定を得ることができなかった時にAPS(自己タンパク質溶液)療法やPRP(多血小板血漿)療法を選択することもあります。PRP療法は、再生医療に分類され、患者様ご自身の血液から血小板を分離し、患部へ注射を行うことで治癒力を高める方法です。

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変形性膝関節症

膝の関節の軟骨の質が低下し、少しずつすり減ることで、歩行時に膝の痛みが出現する病気です。平地での歩行は大丈夫でも、階段で膝が痛いために困っている、歩行時の膝の痛みはないけれど、正座は膝が痛くてできない、などが初期の変形性膝関節症の症状です。さらに変形性膝関節症が進むと、次第にO脚が進んでいき、階段のみでなく平地での歩行にも支障をきたすようになります。

症状

  • 初期:立ち上がり、 歩きはじめに膝が痛む。休めば痛みがとれる。
  • 中期:歩くと膝が痛み、正座、階段の昇降が困難。動作が不自由。
  • 末期:変形が目立ち、膝がピンと伸びず、歩行も困難。日常生活が不自由。

保存療法紹介

薬を用いて痛みなどを緩和する「薬物療法」や、筋力トレーニングやストレッチなどで症状の緩和・予防を行う「運動療法」、サポーターや足底板などの装具を利用する「装具療法」、膝を温めたり、通電などを行う「物理療法」 があります。

再生医療紹介

保存治療を行っても痛みが続いており、手術治療を勧められたが入院する時間がない、手術は不安である方が当てはまります。当院ではAPS(自己タンパク質溶液)療法を数多く手掛けており、施行後1年の短期成績では痛みやADLが改善して良好な成績が得られています。

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手術療法紹介

変形性膝関節症が進行してしまい、思うように歩くことができない、歩けても痛みを我慢しながら歩かざるを得ないなどの場合で手術が最善の方法と判断した場合には、手術による治療を行っています。手術の方法は、 ①関節鏡 ②骨切り術 ③人工関節の方法があります。MRIや立位レントゲンで評価して術式を決めます。引っかかりが主な症状であれば関節鏡によるクリーニング手術や半月板の処置を行います。傷は約7mm2か所テープで固定します。積極的なスポーツ活動や正座を希望される70歳未満の方は骨切り術が適応となります。傷は関節鏡の創と約6cmテープで固定する創になります。自分の関節を再建する方法で痛んだ軟骨が再生することもあります。人工関節は約金属と失われた軟骨の代わりとなる特殊なプラスチックにより膝関節を全体的に置換する人工膝関節全置換術と、損傷が膝の内側に限局されているケースに限定となりますが、膝の内側のみを置換する方法人工膝関節単顆置換術があります。傷は体型によって変わりますが全置換術で約12cm、片側置換術で約8cmテープで固定します。


変形性膝関節症①

変形性膝関節症① 術後

変形性膝関節症②

変形性膝関節症② 術後

半月板損傷

半月板は膝関節の大腿骨と脛骨の間にあるC型をした軟骨様の板で内側・外側にそれぞれがあり、クッションとスタビライザーの役割をはたしています。これが損傷すると、膝の曲げ伸ばしの際に痛みやひっかかりを感じたりします。ひどい場合には、膝に水(関節液)がたまったり、急に膝が動かなくなる“ロッキング”という状態になり、歩けなくなるほど痛くなります。体重が加わった状態でのひねりや衝撃によって半月だけが損傷するものと、前十字靱帯損傷などに合併して起こるものもあります。

症状

  • 膝を曲げたり、伸ばしたりすると、痛みが生じる
  • 膝の関節が完全に伸びない・曲がらない
  • 階段の昇降や膝の屈伸などをしていると「ゴキッ」と異常音がする
  • 歩いているときに「ガクン…」と膝が落ちる
  • 膝が「ガキッ!」と引っかかって 急に動かなくなる

保存療法紹介

軽症であれば、装具やテーピングなどの補助補強、疼痛軽減目的での投薬やリハビリテーションを行います。初期には局所の安静、関節穿刺による関節液の吸引、局所麻酔剤や最近ではヒアルロン酸注射が主流です。以前は抗炎症としてステロイド注射を頻回に行ってましたが、副作用に注意を要します。筋萎縮予防や疼痛の軽減を目的として、大腿四頭筋訓練、膝関節周囲の物理療法(低周波や干渉波による電気刺激)も実施します。

手術療法紹介

ロッキング症状、もしくは繰り返しの半月板損傷、持続する疼痛、しつこい水腫(膝に水がたまる)などがある場合に手術を行います。最近では関節鏡視下で半月板を切除したり、半月板辺縁部の断裂例では縫合術を行ったりします。

滑膜ひだ障害

膝関節を覆う袋である関節包に認めるひだ状の部分は滑膜ヒダと呼ばれています。このうち膝蓋骨の内側縁近傍に認める内側滑膜ヒダは関節鏡で見ると棚のようにみえます。この棚が大きいとき、スポーツや膝への外傷を契機として膝屈伸時に膝蓋骨(皿の骨)と大腿骨の間に挟まったり、こすれたりして炎症を起こし痛みが生じるため棚障害といわれています。

症状

  • 曲げ伸ばしする時に引っかかる感じがする
  • コリッと音がする
  • 違和感がある
  • 常に膝まわりが重苦しい
  • 運動すると痛い

保存療法紹介

疼痛・熱感などの炎症症状を消褪させるためにアイシング、超音波などの物理療法、ストレッチを行います。さらに、再発防止のために自分でできるストレッチ及びトレーニングなどのコンディショニング指導も行います。

手術療法紹介

保存的治療でも疼痛が残存し、日常生活に支障をきたしたり、就労困難やスポーツ活動が困難な場合は手術療法が考慮されます。一般には関節鏡を用いて棚を切除して膝蓋骨と大腿骨との間に挟まりがないようにして痛みをとる方法です。