「腕を上げると痛い」
「服を着替えるのがつらい」
「夜、肩がうずいて眠れない」。
こうした肩の痛みと動かしにくさで悩んでいませんか。
40代以降に多く、はっきりしたケガがないのに肩が痛くなって動かなくなる状態を、一般に五十肩(医学的には肩関節周囲炎・凍結肩)と呼びます。
放っておいてよいのか、早く治す方法はあるのか。
この記事では、原因から治療、受診の目安まで順番に整理します。
1.五十肩とはどんな状態か
肩の関節は、骨を包む「関節包(かんせつほう)」という袋状の組織で守られています。
五十肩では、この関節包に炎症が起き、やがて袋が硬く縮んでしまいます。その結果、
- ✅ 動かすと痛い
- ✅ 自分でも他人に動かされても腕が上がらない
- ✅ 服の着脱や髪を結ぶ動作がつらい
といった症状が出ます。

肩関節鏡で観察した五十肩の関節内。滑膜(関節を包む膜の内側)が増殖し、炎症が目立つ状態です。
| 時期 | 主な特徴 |
|---|---|
| 炎症期 | 痛みが強く、特に夜の痛みが目立つ |
| 拘縮期 | 痛みは少し落ち着くが、肩が硬くて動かない |
| 回復期 | 少しずつ動く範囲が戻ってくる |
2.五十肩の原因となりやすい人
関節包に炎症が起き、線維化(組織が硬くなること)が進むことが背景にあると考えられていますが、はっきりした原因はまだ完全には解明されていません。
次のような方は、なりやすい傾向が知られています。
- 糖尿病のある方
- 甲状腺の病気がある方
- 肩や首の手術を受けたことがある方
- 肩を動かさない期間が続いた方
思い当たる場合は、痛みが軽いうちに整形外科で相談しておくと安心です。
3.五十肩の診断|レントゲン・エコー・MRIで何がわかるか
肩の痛みは五十肩以外の病気(腱板断裂、石灰沈着、関節の変形など)でも起こります。そのため、まずは似た症状の病気と見分けることが大切です。
レントゲンの役割
骨の形や関節の状態を確認し、骨折や関節の変形など、ほかの原因がないかを調べます。五十肩そのものはレントゲンでは大きな異常が映らないことが多いです。
エコー(超音波)検査の役割
エコー検査は、ゼリーを塗ってプローブ(探触子)を肩に当てるだけで行える、体の負担が少ない検査です。
放射線を使わず、その場で肩を動かしながらリアルタイムに観察できるのが特長です。
五十肩では、肩の動きをさまたげる靱帯(烏口上腕靱帯)の厚みや関節包の状態を確認できるほか、腱板の傷や石灰沈着など似た症状の病気との見分けにも役立ちます。
注射を行う際に、針の位置を正確に確認する目的で使うこともあります。
MRIでわかること
必要に応じてMRI検査を行うことがあります。
MRIでは、関節包が厚くなっていないか、炎症やむくみがあるか、腱板の傷など別の問題が隠れていないかを、より詳しく確認できます。

五十肩のMRI画像。矢印の部分で関節包が厚くなっている様子が確認できます。
五十肩はどう治す?治療の選択肢
治療の目標は「痛みを抑えること」と「動く範囲を取り戻すこと」です。多くの方は手術をせずに改善していきます。
症状や時期によって方針は異なりますが、主な選択肢は次のとおりです。
①保存療法(くすり・注射・リハビリ)
- 内服薬:炎症と痛みをやわらげる
- 関節内などへの注射:炎症期の強い痛みに対して用いることがある
- 運動療法・リハビリ:硬くなった肩を少しずつ動かし、可動域の回復を目指す
痛みの強い時期は無理に動かさず、時期に合わせてリハビリの内容を調整します。
②サイレントマニピュレーション(神経ブロック下での関節授動術)
肩につながる神経をブロック注射で一時的に効かせ、痛みを抑えた状態で、硬くなった肩関節を医師が丁寧に動かして可動域の改善を図る方法です。
当院では、入院は不要で外来でできる治療です。
実際の治療はこちら
③改善が乏しい場合の選択肢
数か月の保存療法で十分な改善が得られない場合には、関節鏡を使った授動術などが検討されることがあります。
手術後も早期からのリハビリが大切です。
費用や保険適用の有無は変動する可能性があります。詳しくは受診時にご相談ください。
自宅でできるセルフケアと注意したい動作
痛みの時期に合わせて、できる範囲で肩を動かすことが回復の助けになります。
- 体を前に倒し、腕の重みを利用して軽く揺らす(振り子のような運動)
- 痛みが強いときは無理をせず、温めて安静を優先する
- 動かして痛みやしびれが強くなる場合はすぐに中止する
実際のストレッチ動画はこちら
セルフケアは万能ではありません。
やり方や強さは症状によって異なるため、自己流で悪化させないよう、一度医師や理学療法士に確認することをおすすめします。
こんなときは整形外科へ|受診の目安
次のような場合は、早めに整形外科での評価を検討してください。
- 夜の痛みで眠れない日が続く
- 腕が上がらず、着替えや洗髪などの生活動作に支障がある
- 数週間たっても痛みや動かしにくさが改善しない
- しびれや力の入りにくさをともなう
「様子を見てよいか」を自分で判断するのが難しいときこそ、受診のタイミングです。
整形外科専門医による診断、リハビリテーション、症状に応じた治療の選択肢をご案内しています。肩の痛みでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
- 五十肩は関節包の炎症と拘縮で、痛みと動かしにくさが出る状態です
- 炎症期・拘縮期・回復期と経過し、回復には時間がかかることがあります
- レントゲンでほかの病気を見分け、必要に応じてエコーやMRIで詳しく評価します
- 治療は保存療法が中心で、サイレントマニピュレーションなどの選択肢もあります
- 夜間痛が強い・腕が上がらない・長引く場合は、早めに整形外科で評価を受けることが大切です
よくある質問(FAQ)
A. 多くは時間の経過とともに改善する傾向がありますが、回復まで1年以上かかることや、可動域の制限が残ることもあります。経過には個人差があるため、症状が続く場合は整形外科での評価をご検討ください。
A. レントゲンでほかの病気を除外したうえで、関節包の状態や腱板の傷などをより詳しく確認するためにMRIを行う場合があります。
必要性は症状や診察所見から医師が判断します。
A. 体への負担が少なく、肩を動かしながらリアルタイムに観察できる検査です。靱帯や関節包の状態、腱板の傷や石灰沈着など似た症状の病気との見分けに役立ち、注射時に針の位置を確認する目的で使うこともあります。どの検査を行うかは症状や診察結果から医師が判断します。
A. 神経ブロックで痛みを抑えた状態で、硬くなった肩関節を動かして可動域の改善を図る治療です。比較的早期の改善が期待できる選択肢の一つですが、適応や効果には個人差があり、すべての方に行えるわけではありません。
A. 病期や重症度、治療への反応によって異なります。保存療法で数か月かけて改善する方もいれば、より積極的な治療を検討する方もいます。
A. 肩の痛みや動かしにくさは整形外科が専門です。夜間痛が強い、腕が上がらない、症状が長引く場合は早めの受診をご検討ください。
A. 中山クリニックは兵庫県明石市にあり、神戸市西区・垂水区・加古川市・姫路市など周辺地域からも受診いただけます。
参考文献
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- Kirker K, O’Connell M, Bradley L, et al. Manual therapy and exercise for adhesive capsulitis: a systematic review with meta-analysis. J Man Manip Ther. 2023;31(5):311-327.
- Picasso R, Pistoia F, Zaottini F, et al. Adhesive Capsulitis of the Shoulder: Current Concepts on the Diagnostic Work-Up and Evidence-Based Protocol for Radiological Evaluation. Diagnostics (Basel). 2023;13(22):3410.
中山 潤一(医療法人社団佳和会 理事長)
- 中山クリニック(兵庫県明石市)
- 日本整形外科学会認定 専門医
- 医学博士
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を保証するものではありません。症状や状態によって治療方針は異なります。